【連載】幼小接続スタートカリキュラム 8 教育の場で移行過程を支える

聖徳大学短期大学部保育科准教授 金玟志

 

■「ヌリ課程」の実際

韓国の幼稚園やオリニジップでの「ヌリ課程」は、「経験中心」「体験中心」の統合教育課程を重視して行われています。五領域の1つ目である「身体運動・健康」は、自分の体を肯定的に捉え楽しく体を動かすのを重視しています。

例えば3歳児は、鏡で自分の顔の穴を探す活動から体について興味をもったり(「私の体の穴を探そう」)、4歳児は、自分の体でいろいろな動きをしてみる活動を通し体の機能や調節する力に気付いたり(「いろいろなポーズをしてみよう」)、5歳児は、模造紙に寝転がり体の標本を取って図鑑を見ながら内臓などを描く活動から体に対する知識を身に付けたり(「私の体の中身は?」)と、その年齢に沿ったさまざまな活動から、幼児期に必要な基本的運動能力を育て、健康で安全な生活を営むための態度を養い、自分と他者が違う存在であることを、遊びや活動を通して学んでいきます。

2つ目である「意思疎通」領域は、子どもが日常生活で言葉を使う楽しさを知り、意思疎通能力を養いながら正しい言葉を使用する力や態度を養うことを重視しています。3、4歳児は、人の話をよく聞き理解する力を養うために、絵本の読み聞かせや日常生活で話を聞く大切さ、人の話した内容を理解して動くことへの楽しさ、そして、何よりも自分の思いや考えを正しく相手に伝えるような活動を取り入れ、人とコミュニケーションを取り、喜び合う基本的態度を重視しています。

さらに5歳児は、これまで重視してきた「聞く・話す」だけでなく、文字を意識した活動として絵本の感想を書いてみたり、考えや感想、経験などを文章で表すことを活動として取り入れたりしています。

3つ目である「社会関係」においては、子どもが自分を大事にしながら家族・友達と過ごす方法を知り、共同体として生活するのを意識しながら周りに関心をもち適応できるような基礎能力、人性を養うための領域です。

例えば、3歳児は、先に述べた鏡で自分の顔を映す活動の中で、いろいろな表情を作ってみたり、葉っぱや枝で顔の表情を作ってみたりすることで、感情表現がさまざまであるのを学び、自分と他者とは感情表現が異なるのを知ります。またさまざまな遊びを共有することで感情の調節を体験していきます。

4、5歳児は、自国の文化を理解するだけでなく、多様な文化に触れ、社会や文化に関心をもち、人とともに生きることを、遊びを通して考えたり体験したりしていきます。

4つ目の「芸術経験」は、子どもが親しみある環境から生まれてくる音やリズム、動きや形、色などに美しさを感じ、さらに、友達や教師、親や地域社会の人が表現した多様な芸術作品に触れることから、周りの事物を探究したり創意的な表現を楽しんだりするための領域です。例えば、子どもが体験し感じたものを、さまざまな方法で表現する活動を通して芸術的な要素に気付いたり、自然と物、そして伝統芸術に触れたりすることを通して感性を養うような集団活動を多く試みています。

最後の「自然探究」領域は、自然と調和しながら生活できるように、幼児期から自然を尊重する心を育て創意的に探究し事物に対し論理的に解決できるように、数学や科学を素養するものとなっています。例えば、子どもが周囲の環境に対して好奇心をもちながら「触れる」「想像する」「認知する」といった一連の学びの過程を大切にする活動が、これに当たります。

このように、幼稚園やオリニジップでは、遊びを通して楽しく子どもが自ら生み出す体験型の活動を、全領域の中で基本的な生活習慣を身に付けながら、創意・人性教育を強調した形として統合的な視点で捉えることが求められています。さらに、「満5歳児のヌリ課程」では、これらの5領域と小学校低学年の5教科である「国語」「数学」「正しい生活」「賢い生活」「楽しい生活」を通して学びが継続されることが望ましいとされています。

■幼小連携の現状と課題

韓国の保育現場では、子どもにとっての小学校入学は、人生において大きな出来事であるのを認め、さまざまな形で小学校との連携を模索しています。特に、子どもは入学を通して自分を取り巻く環境である教育機関が変わることにより、情緒的にさまざまな期待と不安があることから、教育現場がいかに移行過程を支えていくのかが重要になってきています(2010年、崔恩貞『小学校移行に見られる満五歳児の情緒に関する研究』)。

この研究によると、小学校への進学に対し子どもは、「遊びに対する楽しさ」「成長に対する期待」「勉強に対する憧れ」「仲間に対する期待」「夢を叶う喜び」といった肯定的反応を示すとともに、「段階別の学習に対する恐れ」「学習に対する負担」「新しい環境に対する不安」「攻撃的な仲間との出会いに対する心配」「規則を守れないかも知れない不安」などの否定的反応があるとされ、学校生活への順調な移行ができるようには、これまで重視されてきた学習のための知識的な準備より、学校生活全般に対する子どもの身体的・社会的・情緒的な準備が必要であることが指摘されました。

また、2013年、幼稚園教諭298人、小学校教諭262人を対象に実施した幼小連携プログラムに関する調査(安瑛恵『満五歳児の小学校適応プログラムの開発』)から、「幼小連携時の幼児に関する重点的な指導内容」を調べたところ、幼稚園教諭の方が小学校教諭より、幼小連携に対して「認知的な学習内容」「幼児主導型学習内容」「社会適応に関する内容」を意識して関わっていることが分かります。

しかし、「生活習慣及び態度に関する準備」については、幼稚園教諭より小学校教諭の方が就学前の学校教育に適応するための基本的な姿勢として生活習慣の準備を重要視していることが分かります。次に、「幼小連携のための学習指導水準」においては、幼稚園教諭の方が小学校教諭より幼小連携における子どもの学習指導に関心を示していることが分かります。また、両者が幼児期の体験的な学習が小学校で繰り返して反復指導することが子どもの学びにとって望ましいと考えていることが分かります。

これらの調査結果は、現行の「ヌリ課程」の基本的な考えが幼小接続を移行する中でいかにに必要なものかを代弁しているともいえます。また、日本同様に、韓国においても、子どもを送り出す側である保育現場の方が、受け入れる側である小学校より接続を意識した関わりに関心をもっていることが分かります。

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