【連載】特別支援教育Q&A 障害を公表しないでほしい

発達障害の高校生への対応

Q 高校で、保健体育を担当しています。今年度、発達障害の診断を受けている1年生のKくんの担任になりました。保護者が「障害を公表しないでほしい」と言うので、特に何もせず、見守るだけの対応をしてきました。

当初は、数学がトップクラスであり、趣味の合う友達ができて、学習上も生活上も大きな問題はありませんでした。しかし、2学期になって、他の生徒とのけんかなどのトラブルが続き、その後、学校を休む日がみられるようになりました。

私が話をすると、「オレは発達障害だから…」といじけてしまいます。また学力面にも影響が出てきています。校内体制としては、特別支援教育コーディネーターや他の先生方も協力的ですが、十分とはいえません。これからどのように対応すればいいでしょうか?

A Kくん自身は、当初は「学習上も生活上も大きな問題」がなかった。それは、あなたや学級の生徒、そして学校全体の環境が、Kくんにとってよかったのを意味しています。また、Kくん自身の行動変容の可能性も示唆しています。これらは、意識的にせよ無意識的にせよ事実ですので、大切にしたいところです。

また、保護者がKくんの障害について「クラスで公表しないでほしい」との気持ち、本人自身が簡単に「オレは発達障害だから…」と言う事実も重要です。おそらく、これまでもこのようなトラブルの経験があったから出てくる言葉でしょう。

さて、高校での発達障害のある生徒への対応については、まだ十分できていないと指摘されています。特別支援教育は「公表」しなくても行うことができます。

(1)まず、インクルーシブ教育の推進です。発達障害は「見えにくい障害」といわれます。そのことから誤解を受けやすく、Kくんの保護者が公表しないでほしいと言われたのも、その困難性を意識してだと思います。インクルーシブ教育は障害の有無にかかわらず、全ての子どもたちの教育ニーズ応ずる教育です。Kくんの障害を安易に公表して、レッテルを貼っては意味がありません。クラスみんなの信頼関係づくりが、インクルーシブ教育です。

(2)次に、Kくんの行動への対応です。見守るだけではいけません。ルールを明確にし、それを現実に守る方法を一緒に考えます。必要な時にはしっかりと叱るのも大事です。ケースによりますが、例えば、Kくん自身に知的な遅れはないのですから、気持ちを文章化するとか、気持ちがコントロールできないときに行うリラクセーションなどもあり、有効です。専門家との連携が必要なところです。

(3)最後に、継続的な支援体制づくりです。Kくんのようなケースは少なくないはずです。まず、全教職員で情報を共有化しましょう。ここで気をつけるのは、指導の大変さの情報だけではなく、効果を上げた関わりの情報を提供するよう、一人ひとりが心がけることです。

高校生は思春期です。Kくんのプライドを大切にして、信頼関係を築いてください。

(加藤康紀創価大学准教授)

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