【連載】これからの生徒指導と学級経営 9 保護者と協働しながら指導

生徒指導コンサルタント 吉田順

 

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校則違反の背景には家庭環境などの課題が存在する

校則違反には必ず〝わけ〟があり、何度指導しても直さない場合には、このわけに取り組まないと違反は根本的に直りません。今回はこの〝わけ〟を考えてみます。規範意識がないから違反するのだと考えては安易すぎます。そこにはもっと深いわけがあります。

校則違反をする生徒とはどんな生徒でしょうか。私が勤めていた学校では、髪は茶髪ですが、言動には全く問題がなく生徒会長まで務めた生徒がいました。まれにそういうこともあるのでしょうが、ほとんど例外なく学校生活は乱れ、粗暴な言動も多く、放置しておくと徐々にその言動はエスカレートしていきます。家庭生活も乱れています。放課後の生活も退廃的で、深夜徘徊も多く、親子関係も悪化しています。どう考えても茶髪が原因ではありません。家庭内に何か原因があると考えるのが普通ではないでしょうか。

朝日新聞の連載「貧困 子どものSOS」(今年10月26日付)に「学校から薄暗いアパートに帰ると、ひとりぼっち。寂しさに耐えきれなかった。夕方、友達から電話で誘われると公園に向かった。公園には、髪を茶色に染めた同級生や先輩が8人ほど集まり、『あいつ、うざい』などと、カップ麺を食べながら、先生や同級生の悪口で盛り上がる」(一部省略)という一節がありました。今は20歳になったこの少女は中学時代、毎夜をここで過ごしたそうです。

このような家庭の生徒は特定の学校を除けば、珍しくありません。私が勤めていた頃の学校のクラスにも必ず数人はいました。本来、家庭は子どもにとって愛情を与えられる場です。親が子に見返りなしで愛情を注ぎ、見捨てられないから無警戒にだめな自分もさらけ出せ、心の安住の場となるのです。

この少女のような場合、家庭が安住の場ではないので、自分を受け入れてくれるならば、どんな集団でも所属してしまいます。集団がどんな価値観をもっているかなど、どうでもいいのです。集団の仲間に入れてもらうためには、茶髪だろうと喫煙だろうと受け入れます。校則を守るより、命をかけるに値する方を選ぶのは当たり前です。この少女と一緒にいた「8人の仲間のほとんどが母子家庭だった」そうです。

校則違反の背景は、こんなに根深いものなのです。おそらく現場の教師ならば、私がいまさら指摘するまでもなく、誰もが経験的に知っているのではないでしょうか。そのため、生徒の〝わけ〟を踏まえ、保護者との協働による生徒指導に転換しなくてはいけません。しかし、難しい背景があればあるほど解決は困難です。それでも不可能を承知で取り組む価値はあるのです。

次回はその点をお話します。