【連載】古川流学級経営12の鉄則 その10 行き詰まったらトイレ磨け

兵庫県赤穂市立原小学校教頭 古川 光弘

 

「便強会」という教えがあるのを、前回書きました。鍵山秀三郎先生が中心になって進めている会です。

トイレを磨くことで心を育てようとする教えです。

実は、平成26年6月28日、兵庫県赤穂市で元読売ジャイアンツの桑田真澄氏の話を聞くまでは、なぜトイレと教育が結び付くのかが分かりませんでした。むしろ、そんなことをしても全く意味がないと思っていました。

でも桑田氏の話で心にストンと落ちました。そのお話とは、次のような内容でした。

「中学時代、順風満帆で、高校に進学した私は、大きな挫折に出遭いました。私より体が大きく、技術も優れた選手がゴロゴロいるのです。どう努力しても太刀打ちできません。どうしようもない失望感でした。私は悩みました。すでに努力をし尽くしている私には努力のしようがないのです。

何もせずにいると、焦りばかりが生じる私は、毎日トイレを一つずつきれいに磨くことに取り組み始めました。こつこつ、こつこつトイレを磨くのです。もちろんこんなことをしたって技術など伸びません。球が速くなるわけでもなく、打球が遠くに飛ぶわけでもないのです。それでも行き場のない私は、こつこつとトイレを磨くことを続けたのです。

あるとき、ふいに試合で投げるチャンスが回ってきました。もちろん、トイレを磨いたって技術が伸びたわけでもないので、バンバン打たれまくります。しかし、スコアボードには、不思議と0が並ぶのです。なぜだと思いますか?打たれた球が、面白いように、確実に野手の正面に行くのです。あるいは、飛び込んだ野手のグラブにスポッとおさまるのです。まるで、神様がいるように思いました。その試合をきっかけに私は自信を取り戻したのです」

私は、この話を聞いて、「う~ん」と唸ってしまいました。そうなんです。トイレを磨いたって、技術は伸びないけど、実は「運」や「つき」が呼び寄せられているのです。

私たちの教師の生活は、分からないようですが、「運」や「つき」におおいに左右されています。どのような地域で教職に就くのか、どのような同僚とともに働くのか、どのような子どもたちや保護者と出会うのか……。突き詰めていくと、これらは全て偶然ではあるにせよ、今後の教師人生を左右する出来事でもあるのです。若くして力が十分に備わっていない教師でも、その力を最大限、発揮させてくださる保護者集団に出会うこともあります。反対に、力量のある教師でも、その力を潰してしまう保護者集団もあるのです。教師にも、やはり「運」や「つき」は大切な要素なのです。

ではそれらを得るためにどうするか?

何もトイレを磨かなくってもいいのです。目の前のことに感謝して、前向きに対応するのです。真心で向き合うのです。私の教師人生、今、振り返ってみれば、「運」や「つき」に恵まれていることばかりです。それは、どんな状況になっても、感謝の気持ちで毎日をすごしているからかもしれません。

運も実力のうちです。呼び込みましょう!

関連記事