【連載】脳科学から手書き・書道の意義を考える 第9回 練習と清書で紙を替えよう

東京書芸協会会長 川原世雲

毛筆習字には半紙を使いますが、練習段階から半紙を無制限に渡していませんか。それは悪いことではありませんが、習字の練習段階と清書の段階で紙を替えるのをお勧めします。小・中学生に集中力を身に付けさせられます。

練習用の紙はたくさん用意します。生徒は試行錯誤しながら何枚も練習します。そして、本番の清書用として、半紙を2枚渡します。その2枚だけで作品を仕上げさせるのです。

この練習法には、脳科学的に見て利点があります。人間の高次脳機能を司る大脳皮質の活動が盛んになると、脳波のβ波が多く出現するようになります。一方、α波はリラックスしているときに多く出現します。

積み木など一連の作業をする際には、集中力が必要です。積み木がそろそろ完成するぞ、というときになると、脳波のα波に対するβ波の割合が高くなるのが知られています。もう少しで完成だ、という段階で大脳皮質の活動が活発になるのです。人間の高次脳機能は学習や思考、注意、それに恥とか思いやりの感情も司ります。 

小・中学生が清書として最後に白い半紙を2枚渡されることで、これを仕上げれば完成だ、という気分が高まり、大脳皮質の活動が活発化します。2枚限りの真っ白な紙に文字を書くのは緊張するものです。毎回の授業でこの方法を繰り返すことによって、生徒は、高次脳機能を高め、もう少しで終わり、という大事な場面で集中力を発揮できるような能力を身に付けます。

参考までに、私の教室では、練習用の紙として新聞紙を4つに切ったものを、清書用では真っ白な半紙を使っています。新聞紙の見開きを4つに切ると、半紙より少し大きいサイズになります。あえてそのまま使います。生徒は紙に対して文字の大きさの微調整もしなければならないため、さらに頭を捻っています。

新聞紙に書くと筆が傷むのではないかと心配する必要はありません。墨汁にはブラックカーボンや合成糊が使われている場合が多く、新聞紙のインクの成分とあまり違いがないのです。筆を丁寧に洗うのが大切です。また、新聞紙を使うのは、物を大切にする心を育んだり、始末する姿勢を学んだりにもつながります。よろしければぜひお試しください。

関連記事