【連載】特別支援教育Q&A 学習のじゃまをする子

多様な関わりを試みる

 小学校5年生の担任をしています。近隣の社会福祉法人の施設から本校には10人近くの児童が通学しています。その1人のS君を担任しています。S君は生活や遊びではほとんど問題はないのですが、学習についていけなくなっています。

また最近では、他児に話しかけたり消しゴムを投げたりするなど、学習のじゃまをするようになってきました。校内委員会では知的発達の遅れの可能性もあるので、S君の特別支援学級への就学も話題になっています。保護者がいないのでかわいそうなのですが、これからどのように対応すればいいでしょうか。

 あなたの気持ちは分かりますが、保護者がいないことでかわいそうとは言えません。おそらくS君のいる施設は、保護者のいない児童や虐待などの環境上養護を要する児童のための児童養護施設だと思います。立派に生活している子どもはたくさんいます。また職員も子どもたちの成長を願い、深く関わっている実態があります。

ここでは、「学習のじゃま」の背景にあるS君の実態を捉え、よりよい学習環境づくりの視点から考えてみましょう。

まず、施設職員との情報交換が必要です。できれば施設に訪問してみてください。S君について多くのことを知ることができます。例えば、学校ではS君の「生活や遊びではほとんど問題はない」とのことですが、施設内での「生活や遊び」の様子はどうでしょうか。施設では子どもたちが兄弟姉妹のように生活しています。職員もいろいろいます。ちょうど家庭のお父さん・お母さん・お兄さん・お姉さんのようです。そこにS君の生活の基盤があるのです。「学習のじゃまをするようになってきました」という、その理由が見えてくるかもしれません。

次に、安心と安全が確保され、信頼関係があることです。その視点から学級を考えてみましょう。特に、学級の人間関係は大切です。「教師がいつも自分をちゃんと見ている」「他児が好意的に見ている」という意識は、子どもの安心感につながります。インクルーシブな学級を訪れると、多動でよく離席する子が不在のときでも、授業で「これ、Cちゃんのプリントね」と、机の上に配布物をその都度置いておく。「この漢字、次にCちゃんに説明するからね」「Cちゃん、この給食好きだよね」などと、教師も子どもも好意的な言葉を自然に表現している実態があります。教室にその子の居場所がいつもきちっとあるのです。

最後に、就学の問題ですが、S君の「学ぶ喜び」を基準に考えていきましょう。その意味で、「学習のじゃま」は、既存の指導法に対する子どもたちの挑戦かもしれません。多様な関わりを試みてほしいと思います。ICTなど教育機器の活用、グループ学習、少人数による指導、介助員などによる個別指導、施設職員の協力を得て宿題の提供、特別支援学級との交流学習。発達障害の可能性があれば、通級や特別支援教室なども考えられます。特別支援学級への就学だけを考えず、知恵を出し合って応援しましょう。

(加藤康紀・創価大学准教授)

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