【連載】これからの生徒指導と学級経営 10 「わけ」は解決できなくていい

生徒指導コンサルタント 吉田順

 

生徒を立ち直らせる芯のある指導を磨きたい
生徒を立ち直らせる芯のある指導を磨きたい

校則違反をはじめ生徒指導上の問題の背景には、子どもの家庭のあり様が深く関わっていると前回話しました。家庭の問題ですから、第三者の教師にはどうにもならないのがほとんどです。それでもこの「わけ」に取り組む必要があります。他人の心に土足で入るような取り組みをしてはいけません。教師側の一方的な価値観や考え方を押しつけたり、相手を否定したりするような言い方は厳禁です。

前回、紹介した深夜徘徊の少女に対してならば、「それをしてはいけない」と説教調に話すのではなく、「公園で溜まっているのは、どんな魅力があるのかな」などと、本人の気持ちを引き出すのが最初です。

家に帰ってもひとりぼっちで、集団が寂しさを埋めてくれるので毎夜通っていると受け止めてあげます。崩れた集団に魅力があるのではなく、崩れた集団にしか寂しさを埋めてもらえないのです。本当は家庭の中に求めているのです。

少女の気持ちを何とか母親に伝えたいものです。今度は母親に会う作戦を立てます。経験上、わが子がどんなに荒れようが、どうでもいいと本当に思っている親はいません。

どこかでボタンを掛け違い、親子で互いの本当の気持ちを知らずに、毎日が過ぎていくのです。今度は教師がその橋渡しをします。少女の気持ちを伝えて、「お母さん、何とかしましょう」と共同して取り組みます。もちろん、一直線にうまくいくことはほとんどありません。長く抱えてきた家庭の問題は、そんなに簡単には解決できませんが、親と教師が私のために悩んでいる、と少女が感じてくれると成功です。

結果として、その少女と担任の人間関係は好転します。悪いことは叱り、許さないという態度を貫いても、見捨てられたのではなく、私を立ち直らせるために叱っているのだと理解できるようになるからです。人間関係がない中で叱れば、心は離れますが、見捨てられていないと確信がもてる相手なら、叱られても心は離れません。この理屈と同じです。

これでなぜ「わけ」を知ろうとし、その「わけ」に取り組むのが大切か、分かっていただけたでしょうか。校則違反であれ、他の問題行動であれ、教師が「お前のためだ」「後で困るのはお前自身だ」などと、外側からいくらやさしく諭しても、指導は通りません。将来の自分より、今の自分にとってそれどころではない切実な「わけ」を抱えているのですから、教師はその「わけ」を無視していくら指導しても、指導は通りません。

「この教師は悪事には厳しいが、私の味方かもしれない」と思ってくれたときにしか、本当の指導は通らないものです。それにしても、本当の指導は、なかなか時間もかかり、難しいものです。次回は、それを教えるのがベテラン教師だという話をします。

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