【連載】飯田稔のすばらしき教員人生 92 『数こそ質なり』に学ぶ

■心臓外科医は語る

昨年の晩秋から初冬にかけ、心臓外科医の書いた本を数冊読んでみました。なぜ、専門外の本を読んだかと思われる人もあるでしょう。それは、筆者が心臓冠動脈バイパス手術を、受けることになってしまったからです。

バイパス手術に加えて、心臓と足のカテーテル治療も受けることになっています。手術のことが気になるし、どんな治療を受けるのかも気掛かりであったからです。

これは、筆者のような者が専門書を読んでも分かりません。体験記や実践談に、目を通すことが分かりやすいのです。話の先を急ぐと、筆者の心臓バイパス手術は無事終了し、術後の経過も良好です。入院中にベッドで、心臓外科医の著作数冊を読んだのです。

■数こそ質なり

そのなかの一冊に、新浪博士教授(埼玉医科大学国際医療センター心臓外科診療科長)の書かれたものがありました。書名は『数こそ質なり』です。この人の心臓手術件数は、年間300例以上です(同病院の手術件数は年間600例以上)。

「外科医とは職人である」「病院の信頼は、『患者の信頼』の積み重ねでしかない」「経験は感覚に昇華する」と語る著者は、手術件数の多いことで診療の質を高める。診療の質は、手術件数によって高まるとの主張です。それが書名なのです。外科医の精進と自信のうかがえる内容を敬服して読み通しました。そして、著者が執刀する手術を受けたのです。

■教育界では

教職の世界では、〝数こそ質なり〟が研究授業(授業研究)の回数ではないでしょうか。若い教師の時代から、この回数を重ねたか、進んでそれを引き受けたかの違いだと思うのです。もちろん、そうした環境にあったかどうかも関係しますね。

ところで、教育界の噂話をご承知でしょうか。「○○先生は、研究指定校でない学校ばかり選んで転任希望を出す」の噂です。つまり、研究授業を回避することばかり考えている存在です。困った存在ですね。

これは、教職の世界の恥ずべき姿です。もちろん、こうした人ばかりではありませんが…。外科医の発言に学びたいことです。

(元公立小学校長、千葉経済大学短期大学部名誉教授)

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