【連載】若手教師講座 教材研究の達人を目指そう 第9回 国語 初級編 3

監修(一財)総合初等教育研究所 梶井 貢

 

教師自身が作品としっかり向き合う
魅力をとらえ、見る目と感性を磨く
ポイント1
作品の魅力を整理する

今回は、5年生の教材文「大造じいさんとガン」を取り上げます。

この「大造じいさんとガン」は長い期間にわたって各社の教科書に掲載されている、魅力のある作品です。私たち教師は、作品を目の前にした時に、「どのように教えたらよいのか」と、すぐに考えてしまいます。ですが、それでは、作品のよさを生かした指導はできません。まずは、教師が作品を読み込み、その魅力を整理してみましょう。

(1)登場人物の魅力

①残雪
 残雪のもつ知恵や勇気、統率力、頭領としての威厳に心を魅かれます。特に、「残雪の目には、人間もハヤブサもありませんでした。ただ、救わねばならぬ仲間の姿があるだけでした。」と、仲間を助けようとハヤブサに体当たりする場面は、心を打たれます。

②大造じいさん
 「じいさん」と書かれていますが、これは若い時の話です。前話をしっかりと読み、年齢を押さえましょう。大造じいさんと残雪の知恵比べも魅力の一つです。そして、「あの残雪め」という憎く思う気持ちから、「ガンの英雄」と呼ぶに至る大造じいさんの心の変化が、この作品の中心となります。

(2)構成の魅力

この作品は、長文であるのに、それを意識させません。起承転結に分かれ、年月の区切りやその年に行った作戦がはっきりと書かれているので、とても分かりやすいです。場面が進むごとに作品の中へ引き込まれ、クライマックスを迎えます。そして、新たな大造じいさんと残雪の関係の発展に結び付くその展開に、すがすがしい後味が残ります。この構成も大きな作品の魅力です。

(3)描写の魅力

①登場人物の描写
 作品を読んでいると、細やかな行動や様子の描写により、残雪と大造じいさんの姿が目の前に浮かんできます。一つ一つの言葉をていねいに読んでいくと、人物像がより鮮明となってきます。また、大造じいさんの独り言や、感嘆の声などが効果的に用いられ、心情が読み取りやすくなっています。

②情景描写
 この作品で押さえたいのが、この情景描写です。特に、一の場面の「秋の日が、美しくかがやいていました。」、二の場面の「あかつきの光が、小屋の中にすがすがしく流れこんできました。」、三の場面の「東の空が真っ赤に燃えて、朝が来ました。」、四の場面の「らんまんとさいたスモモの花が、その羽にふれて、雪のように清らかに、はらはらと散りました。」は、美しい情景とその場の空気まで伝わってきます。また、それだけではありません。これらの情景は大造じいさんの心情をも表している大事な言葉です。ここを押さえることによって、大造じいさんの心情をより深く理解することができるのです。

ポイント2
子どもの実態に合った言語活動を設定する

「読み取りマップ」をもとに児童の考えをまとめていく
「読み取りマップ」をもとに児童の考えをまとめていく

このように、作品の魅力を教師が十分理解した上で初めて、「どのように教えたらよいのか」考えます。教師主導でなく、子どもたちが自ら作品の魅力を見つけ、味わってほしいものです。

(1)読み取りマップ

今回は、一人ひとりが作品を「読み取りマップ」を使って整理しながら、自分が感じた「大造じいさんとガン」の魅力をまとめていくことにしました。自分の心に残った叙述にサイドラインを引き、残雪と大造じいさんに分けて読み取りマップに書き抜いていきます。優れた叙述を自分で見つける力を付けることと、マップの上に書いて再構成することで、整理され、物語全体を捉え、理解を深めることをねらいとしました(別掲「読み取りマップ」)。

(2)魅力カード

そして、毎時間の最後に、その日に学習したことの中から、自分が作品の魅力だと感じたことを、カードにまとめていきました。

ある時間は、残雪の魅力を書き、ある時間は、大造じいさんの心情の変化を魅力としてまとめます。その他、情景描写や物語の展開、文章表現など、さまざまな観点で作品の魅力にせまります。自分が感じたことを、客観的に捉えて、文章で表現することをねらいとします。その時に、なぜそこを魅力と感じたのか、叙述を根拠として説明するようにします。そして、単元の最後には、毎時間書き貯めたカードをもとにして、「大造じいさんとガンのみりょく」として文章を書き、友達と伝え合いました(別掲「『大造じいさんとガン』のみりょく」)。

(3)全体指導

自主的な活動を中心としながらも、その時間に全体で押さえなくてはいけないことがあります。「今日は、この叙述を用いて、このことを読み取らせたい」と、内容をしぼり、クラスのみんなで考え、意見を出し合います。そこで、友達の考えから新たな発見があったり、自分の考えに確信がもてたりします。また、教師が考えをゆさぶるような発問をすることで、より読みが深まっていきます。そして、全体で共通に学んだことが土台となり、また個の読みの力として返っていきます。

[まとめ]

教材研究は、地道なものです。短時間に簡単にできるものではありません。まずは、教師自身がその作品としっかりと向き合い、子どもと同じように勉強してみることです。実際にサイドラインを引いたり、読み取りマップや魅力カードを書いたりすることで、子どもがつまずくところが見えてきます。そうすれば、発問や助言の仕方も変わってきます。その積み重ねによって、教師自身の作品を見る目や感性も磨かれていくのです。
(担当・東京都青梅市立第二小学校 松井 優子)


[単元について]

(1)単元名
「大造じいさんとガン」のみりょくを伝え合おう
―読み取りマップを活用して―

(2)教材名
・「大造じいさんとガン」(光村図書 5年)

(3)単元の目標
・優れた叙述によって、場面の様子や登場人物の深い心情を想像しながら読むことができる。

(4)指導計画(12時間扱い)p20160128_03指導計画

[本時の指導略案(8/12時間)]

(1)本時の目標
3の場面の大造じいさんの心情を、行動やつぶやき、情景描写から読み取ることができる。

(2)展開p20160128_02展開

[今回の教材研究のポイント]

▽作品の魅力を整理する
▽子どもの実態に合った言語活動を設定する

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