【連載】こころ元気エクササイズ 若手教師編 第59回 消えたい子どもたち

メンタルトレーナー 加藤史子

 

あなたがいてくれてよかった

先日、養護教諭の研修会で講師をさせていただいたときに、保健室に来る子どもたちが、「消えたい」「自分の存在を消したい」「自分には存在する価値がない」と言う生徒が増えていると聞かせていただきました。このような子どもたちへの対応を知りたいと思っている先生方は多いと思いますので、今回はグールディングの「12の禁止令」について説明し、対処法を紹介します。

同じ教室の風景でも、見る人によって見え方が違うのです。その見え方や捉え方に大きく影響しているものの一つに、禁止令があります。禁止令とは子どものころに無意識に受け取る「これはしてはいけない」という何かを禁止される考え方です。その考え方をもつことで物事の捉え方や感じ方にも大きな影響を生涯与え続けるものです。

グールディングは、12の禁止令があるのを発見しました。それは、▽近づくな▽考えるな▽するな▽痛みや空腹を感じるな▽感情を感じるな▽重要であるな▽成功するな▽子どもであるな▽お前であるな▽成長するな▽健康であるな▽存在するな」です。

例えば、大人が忙しさのあまり近づくなオーラを出し続けていると、「近づいてはいけないんだ」と思い込み「近づくな」いう禁止令ができていきます。怒ったときに「怒るな」、泣いたときに「泣くな」と言われ続けると、感情を感じてはいけないと思い、「感じるな」という禁止令となります。

子どもが考えたことに対して「お前は考えなくてもいい。正解は大人が考える」というようなメッセージを受け取り続けると、自分では考えないほうがいい「考えるな」という禁止令になり、「あれもやっちゃだめ」「これもやっちゃだめ」と、することを禁止し続けると、してはいけない「するな」という禁止令になっていくわけです。

自分が発言したり、いい成績をとって嫉妬されていじめられたり、悪口を言われたりすれば「重要であるな」や「成功するな」という禁止令になるでしょう。自分らしく振る舞うのを否定されれば、「お前であるな」という禁止令となっていきます。「お前がいるせいでこんなことになってしまった」「お前なんかいなければよかったのに」「お前のせいで負けた」と言われたり、自分を育てるために親が苦労している姿を見ていると、自分さえいなければよかったのかもしれないという「存在するな」という禁止令になります。

前述の「私なんか存在する意味がない」「消えてしまいたい」と思ってしまう子どもには、「存在するな」という禁止令があるので、何かが起きたときや日常の風景までもが、その禁止令の影響で「自分なんていなければいい」という思考に陥ってしまうのです。そのような子どもへの働きかけは、「あなたがいてくれてよかった」「いてくれると助かる」「一緒にいると楽しい」というような、存在への許可の言葉を、日ごろから多めにかけてあげることです。

それぞれの禁止令への効果的な対処法は、禁止されていることに対しての許可なのです。「近くにいていい」「考えて決断していい」「したいと思ったことを行動に移していい」「重要な存在になっていい」「成功していい」というように、その子に必要な許可の言葉を、多くの場面で伝えてあげてほしいと思います。

関連記事