【連載】特別支援教育Q&A 保護者の不安と通級指導

子ども主体の対応が大切

 通級指導教室の担任です。小学校5年生のS子は自校通級です。1年生の半ばに、情緒が不安定で集団になじめず、友達ができない、トイレに行けないなどで入級してきました。

その後、同学年の男子や低学年の女子と通級日が同じとなり、3年生半ばころからは、小集団の中でリーダーシップを取るくらいまでに改善がみられました。同時に、通常の学級でも徐々に積極的になり、昨年10月の就学委員会で、今年度で退級することになりました。

ところが、1月になって母親から養育の不安を理由に、通級の継続の申し出がありました。担任としてS子は、学習上、生活上とも通常の学級だけで大丈夫だと思っていますが、このような場合、どのように対応すればいいでしょうか。

 母親から「通級継続の依頼」があったのは、通級での指導や関わりを評価しているからです。母親にとって、通級が支えとなっているのでしょう。保護者の不安はさまざまですが、通級の入級時はどうだったでしょうか。同じような不安があったのではないでしょうか。環境が変化するときに不安があるのは普通です。

合理的理由はともかく、まず本人・保護者が納得し、安心して就学(退級)できるのが必要です。
あなたは通級の担任として、「S子は学習上も生活上も通常の学級だけで大丈夫」と考えている。おそらく、通常の学級の状態や中学校への進学を十分に考えての判断だと思います。

それを前提として、ここではS子の現在の教育上のニーズだけでなく、保護者、本人の将来、次年度の通級なども含めて、総合的に考えてみましょう。

(1)保護者との好意的な共通理解です。最初に保護者との関係です。「不安」の実態を共感的に理解しましょう。これが意外と難しいのですが、ポイントは「説得しない」です。結論は急がず、S子のためにどうするのがよりよいのかを、共に考えるのです。保護者に寄り添う時間が相互に「好意的な共通理解」を醸成してくれます。「心があれば、時間は必ずあなたに味方をする」のです。

(2)通常学級での支援の問題です。インクルーシブ教育を推進するチャンスです。退級するか否かではなく、将来を見通したS子の通常の学級での学習上・生活上の課題の支援の在り方の問題です。他児との関わりもあります。それぞれ視点は異なるわけですが、S子は自校通級です。通級していなくても、さまざまな支援がしやすいですね。

(3)S子の主体性と柔軟な対応です。S子の課題は、当初「情緒の不安定で集団になじめず、友だちができないこと、トイレにも行けない」でした。現在、5年生の時点ではどうでしょうか。

違った形で課題もあると思いますが、大きく成長しています。S子の気持ちはどうなのでしょうか。いよいよ6年生。通級の状況も変化するでしょう。S子にとっての「居場所づくり」は、用意してあげるのでなく、自分で作りだす時期かもしれません。

 (加藤康紀創価大学准教授)

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