【連載】いつからいつまで特別支援 第10回 「LD問題の25年」~発達障がいのこれまで(その⑤)

臨床発達心理士 池田啓史

LD問題は「個別指導計画」課題

〈ひとまずのまとめ〉

前回までに、4回にわたり、平成に入って教育界の一大課題として浮上した「LD問題」について、当時の都教委のアクションをドキュメンタリーとして紹介してきました。

前回の最後に、「学習障害(LD)児の理解啓発の資料は翌平成8年12月にもNo.2を発行しましたが、その中で取りあげられた児童生徒の困難さとは、やがて課題として現実化する「AD/HD」や「高機能自閉症」の症状が大半を占めるといった状況になっていました」と結びました。
実際には、当時、LD児として、メディアなどに紹介された児童の動画などを見ると、その行動は明らかに、現在の「自閉症スペクトラム」の状態を示しています。

LD児の中でも、言葉の遅れのない子どもたちは「非言語性LD」と診断されていました。数年後、「アスペルガー症候群」と診断名が変更されました。そこで、LD問題のひとまずのまとめをします。
次回からは「発達障がいと特別支援教育誕生」のきっかけとなった「個別指導計画」に話題を進めていくことにします。

LDについて、国は現在は、次の定義を示しています。
「学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはありませんが、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を示すものです。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されますが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害等の障害や、環境的な要因が直接的な原因となるものではありません」

25年前に私が出会った、LDと思われる児童をこの定義に当てはめると、こんな状態像が思い出されます。
小学校3年生の女児は、成績は上位でクラスでの人望もありました。発言も適切でバランスのとれた子でした。しかし、国語の「音読」、文字を目で追って読むことに極端な困難さを示していました。

人の朗読を聞いて、内容や筋道は理解でき、要約して発表することもできました。ところが、「読み」になると、スラスラと読めず、一文字、一文字を指でたどりながらといった状態でした。
文字を書くことにも困難さがありましたが、視写は得意でした。作文などでは、五十音表で確認しながら、ゆっくりしたペースで書いていました。

現在では、こうした症状は、「ディスレクシア(読み書き障がい)」と診断されます。LD児の約80%を占めるといわれます。原因として、脳の言語理解を司る39野、40野(黙読中枢)が機能していないことが分かっています。

私たちは、文字を見た時に、まず視覚野で形を捉え、39、40野で黙読します。ブローカー野というところで、音声として発語しているといわれています。
こうしたLDの人たちは、文字を音声に置き換えるなど、さまざまなメディアを駆使して、その能力障がいを克服しています。そのための指導技法は教育現場でも、かなり取り入れられるようになりました。即ち、LD問題は、その子の困難さに応じた「個別指導計画」の課題でもあったのです。

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