【連載】子どもの自立を育む学級経営 第12回 教師の本気を行動で見せる

京都文教大学准教授 大前暁政

導く指導は子どもの自立に不可欠
導く指導は子どもの自立に不可欠

教師の指導には大きく2つの側面があります。指示や指導を力強く行う「教える」(ティーチング)方向性と、子どもをよりよい方向へ自然と導いていく「導く」(コーチング)方向性です。

「教える」場面では、教師が子どもに直接関わり、正しい方向に向くようにしていきます。言い換えると、教師が直接的な影響力を発揮する場面になります。もう1つの「導く」場面では、子どもが自然とよい方向へ動いてくれるように促していきます。これは教師の間接的な影響力が重要になります。これを「褒める」という「教育行為」で考えてみます。

直接的に指導をして、結果、子どもが頑張ったとします。当然、教師はしっかりと褒めます。これで、学級は基本的にうまくいくはずです。子どもは望ましい行動を取るようになります。

ただ、褒めるにも少しだけ「弊害」があります。「褒められるから頑張る」という子は、教師がいないと頑張らない点があります。褒めてくれない教師のもとでは、急激にやる気を失ったりします。反対に、「教師に褒めてもらおうと思って無理に頑張る」子が出てきたりします。教師にとって都合のよい行動だけ褒めると、教師の顔色うかがいのようになってしまう例もあります。直接的な指導が過ぎると、弊害が出てくる点もあるのです。そこで、バランスの考え方が大切になります。

褒める弊害を少し弱めるため、子どもが自分で「望ましい」と考えた行動を取り、その結果、よい点があったら、「教師も喜ぶ」行動を取るのが1つの選択です。これなら、教師が喜ぶだけなので、前の例よりも間接的な影響になります。

子どもの頑張りに「驚く」のもよいでしょう。「◯○君が頑張っているから、先生も人一倍頑張る」といった例です。ほんの少し対応を変えるだけで、間接的な影響力に切り替えられます。結果、褒める弊害を少し軽減できます。

同様に、教師が差別なく学級の一人ひとりを大切にしましょう。「差別は許さない」と直接的に指導するより、教師自身が望ましい行動を通じて「間接的な影響力を発揮する」方が、意外と教育効果を発揮するときがあります。というのも、間接的であるがゆえに子どもは自分で自分の行動を選択したと思えるからです。

まず、教師自身が差別をしないという行動を選択し、結果、どの子も満足して学級で過ごせる状態が生まれます。その事実を見た子どもたちが「やっぱり差別はよくないのだ」と理解します。そして、自分自身で「差別をやめよう」という行動を選択するのです。

自分自身で選んだ行動ですから、教師にやらされている行動ではありません。自分で自分の行動を選択したという主体性があれば子どもは進んで行動できます。自分自身で選んだ行動なら、人は力強く意志を発揮できるものです。そして、自分で「差別をしない」という行動を取った子は学級が変わっても差別をしないものなのです。

直接的に「差別をしない」と「教える」側面は大切ですが、「差別をしないように」自然と促す「導く」側面も大切にしたいものです。学級経営で、子どもたちが自立できるかどうかは、「直接的な指導」と「間接的な指導」のバランスにかかっています。どちらが欠けてもだめなのです。
ただ、「導く」方向で影響力を発揮する場合は教師の強い意思や根気が必要です。そして、子どもを自立に導くためには、この「導く」方向性の間接的な影響力が重要になるのです。

(おわり)

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