【連載】若手教師講座 教材研究の達人を目指そう 第10回 社会 初級編3

監修 (一財)総合初等教育研究所 梶井貢

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実態に合わせた歴史的事象の獲得を
多くの気付きを引き出しながら
ポイント1
歴史的な社会事象の見方・考え方を育てる

児童が歴史的な社会事象を確かにとらえるためには、「今からどれぐらい前のことか」といった時間に関することをはじめとして、「どのように移り変わってきたのか(変わらずに続いてきたのか)」「何がきっかけとなって変わったのか」「変わったことによってどのような影響が起きたのか、そのことをどう考えるか」などといった見方・考え方を育てていく必要があります。

私たち大人は、これまでにさまざまな生活経験や学習経験を積んできているので、このような見方・考え方がすでに備わっています。ですから教材研究した内容をすんなりと理解することができ、価値判断もできるのです。

しかし、小学校段階の児童は大人とは違います。極端な言い方をするならば、3年生の児童にとっては、江戸時代の武士も平安時代の貴族も皆同じ「昔の人」です。住んでいた時代の順序性や時代背景などの区別はほとんどついていないといってよいでしょう。

そこで、教材研究では、まずは児童の実態を十分に踏まえた上で、先ほどあげた見方・考え方をどのようなステップを踏んで育てていったらよいかを考えていきます。そして、小単元や1時間1時間の学習計画立案へと進んでいくのです。

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ポイント2
実物に触れる・比較する

歴史的な社会事象に迫るには、さまざまな方法がありますが、実物に触れる学習活動はとても有効です。 意欲的に調べることができますし、見たり触ったり、また、実際に使ってみたりすることで、実感的に理解を深めていけるからです。

今回は昔の道具として七輪を取り上げることにしました。その主な理由は、次の通りです。

(1)構造が簡単なので、調べやすい。また、現在でも入手が可能で、必要に応じて数をそろえることができる。
(2)空気を取り入れる量で火力を調節することをはじめ、今の道具(ガスコンロ)にいかされている工夫が随所にある。
(3)「食」に関する道具なので、児童の興味・関心をひきやすい。加えて、そこから当時の人々のくらしに目を向けていくことができる。

次は、調べ方についてですが、七輪だけを調べさせてもあまり多くの気付きを引き出すことはできません。比較する物を同時に出すことが効果的です。また、新旧の道具の移り変わりにも目を向けていくことができます。本時の学習では、比較の対象としてガスコンロを用いました(写真1)。比較する場合にも配慮が必要です。段階を追って、児童にとって無理なく学習活動が展開していくようにしました。

まずは、「似ているところ」と「違っているところ」に分けて見付けたことを整理します(写真2)。次に、違いについては、児童の意見を種類ごとに意図的に分けて板書し、ある程度意見が出たところで、分類した観点を児童と一緒に考えます(写真3)。
これらの学習がすんだところで、当時の人々のくらしを予想したり、疑問に思うことを出し合ったりする展開としました。

ポイント3
人々のくらしに目を向ける

本時のように、七輪を詳しく観察させていくと、ともすると、人々のくらしから離れ、七輪という道具を理解する学習になってしまうことがあります。

授業の目標を達成するためには、まずは児童から七輪に対する多くの気付きを引き出さなくてはなりません。しかし、そのことに終始してしまうのでなく、七輪を使っていた頃の人々のくらしに目を向けさせるための手だてを事前に十分に練っておくことが必要です。

例えば、「火のつけ方」に関することであれば、「時間はどれぐらいかっかっていたのだろう」「1日に何回ぐらいやっていたのだろう」といった具合に、児童の思考が人々のくらしに向くような発問な用意しておき、タイミングよく児童に投げかけるのです。

次に配慮することは、昔の人々のくらしというと、「不便だった」「大変だった」といった負の先入観が先に立ってしまいがちです。
たしかに、今のくらしと比べると大変だったとは思いますが、その当時の人々の知恵や工夫があるわけです。七輪でいえば、火力の調節の仕方や、調理する物を乗せる台の形状など、今の道具にいきているものが、児童にもきっと見付けられるはずです。そういうところにもしっかり目を向けていけるよう指導上の留意点を考えていきましょう。


まとめ

6年生の歴史の学習ともなると、好きな児童と嫌いな児童とがはっきりと分かれてしまいがちです。その原因を探ると、歴史的な社会事象の獲得の仕方に問題があるのではないかと思います。「ポイント1」で示したように、歴史的な見方・考え方を児童の実態に即して丁寧に育ててきたか、そうでないかの違いです。

児童の実態をあまり考慮しないで、足早に理解だけを促すような学習を進めていったならば、どうしても歴史は「覚える学習」になっていってしまうでしょう。すると歴史嫌いをつくってしまいます。

「昔のことは、はじめのうちはあまりよく分からなかったけれど、一つずつ予想を立てながら調べていったら、いろいろな発見ができて楽しかった」「今の自分たちと比べながら、昔の人々の考えを探っていくと、意外と共通点があっておもしろい」などといった児童の声が聞かれるような学習をぜひ目指してください。(担当・東京都練馬区立橋戸小学校 横尾 康幸)


 

[単元について]

(1)小単元名
「古い道具にこめられた思い」

(2)小単元の目標
・古くから残る生活道具やそれらを使っていた頃のくらしの様子から、地域の人々の生活の移り変わりや人々の願いを理解し、地域に対する誇りや愛着をもつ。
・古い道具から学習問題を見いだし、地域のお年寄りから古い道具の使い方を教わったり、郷土資料館などで昔のくらしを調べたりして絵年表にまとめ、地域の人々のくらしの移り変わりや知恵について考えたことを表現する。

(3)指導計画(8時間扱い)
・現代のガスコンロと七輪を比べて、共通点や違いを話し合う(本時)。
・地域のお年寄りなどにたずねて、七輪の使い方やその頃のくらしの様子を調べる。
・郷土資料館に行き、昔の道具の使い方やその頃のくらしの様子を調べ、カードにする。
・カードを絵年表にまとめて、気付いたことや考えたことを短い文章に表現する。

[本時の指導略案]

(1)目標
ガスコンロと比較しながら七輪を詳しく観察し、気付いたことや、予想や疑問を話し合う。

(2)展開
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[今回の教材研究のポイント]

▽歴史的な社会事象の見方・考え方を育てる
 ▽実物に触れる・比較する
 ▽人々のくらしに目を向ける

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