【連載】スクールカウンセラーひと口アドバイス 72 保護者の不安に十分寄り添う

臨床心理士 小見祐子

 

授業中のけがでクレーム


中学校1年生の担任をしています。3週間ほど前の体育の時間に、クラスの男子生徒2人がサッカーのゲーム中に接触し、そのうち1人が転倒してしまいました。普通に立ち上がり、歩いている様子も報告されました。大事には至っていないと思いましたが、痛みを訴え、早退したいとのことなので、保護者に連絡し、整形外科で診察を受けてもらいました。足首の捻挫でした。転んだ本人が「大したけがでないから大丈夫です。もうごめんと言ってもらったし」と言っており、保護者もそのときは「大げさにしなくてもいい」と言いましたので、接触した相手方の生徒の保護者には、あえて伝えませんでした。

ところが、ここへきて、「こんな長引く通院なのに、お詫びの一言もないのはおかしい」「通院のためのタクシー代が欲しいわけではないが、家計を圧迫する」と言ってきました。この一件をどのように理解したらよいのか、学校ではこのようなことはよくあるので、参考になる意見を知りたいです。

□  ■  □


体育の授業中や部活動中に、生徒同士がぶつかってしまったり、ふざけあっていてけがをしてしまったりは、気を付けていてもよくあります。悪意をもって傷つけようとしたわけではないので、お互い様の気持ちになれるときもあれば、今回のように、長引いてしまう場合もあります。

「大事」であるかどうかの判断は、おおむね経験的に学校でできる場合もあれば、軽そうに見えても専門家に委ねた方がよい場合もあります。痛みの感覚には個人差があるので、だからこそ客観的な「大事」の判断が必要です。

また学校にとってはよくあることではありますが、だからといって端折ってよいという事案ではありません。ささいに見えても、痛みが残るけがの場合には、加害側の保護者にも状況を丁寧に伝えることが、特に肝要です。加害側の保護者の立場としても、アクシデントとはいえ、わが子がクラスメートにけがをさせてしまった場合、ひとこと知らせてほしかったと思うでしょう。

けがをしてしまう前の、生徒の適応の状態も、その回復が順調にいくかどうかに大きく関わってきます。けがをきっかけに、潜在的な課題が浮かび上がってくる場合もあります。ぎりぎりの適応状態であったり、保護者の関わりが過保護傾向にあったりする場合など、回復が遅れてしまうこともありがちです。子どもがけがをして帰ってきたとき、安心安全な場所であると思っていた学校が急に危険に思えてしまう場合もあるかもしれません。保護者の不安に十分に寄り添う視点を忘れてはなりません。(おわり)

関連記事