【連載】教育のユニバーサルデザインにチャレンジ 23 人的環境② SSTは万能でない

星槎大学准教授、日本授業UD学会湘南支部顧問 阿部利彦

 

いまやソーシャルスキル(SST)のニーズは非常に高まり、相談機関や療育機関などで盛んに行われています。
近年、特別支援学校や通級指導教室といった学校現場にも取り入れられ、その必要性・有効性は十分認められています。私は、SSTを実施さえすれば、子どもに社会性や対人関係能力が身に付く、とは考えていません。

例えば、自閉傾向の子どもは、通級でSSTの指導を受けても、それを般化させて家庭や教室で応用できない面があります。ADHDの子どもでいえば、こうしましょう、などとお仕着せの指導をされると、あえて挑戦したくなる性質を持っています。「そんなことわかってら。でもオレはやらないよ」という態度になりがちです。

SSTは誰にでも効果的というわけではなく、効果的な子どもとそうでない子どもがいると考える必要があります。

効果が定着しにくい子どもの特性を、私はこのように捉えています。まず、ソーシャルキューをつかめないタイプです。コミュニケーション場面で、自然にとらえられる合図、視線や表情、身体の動きなどのキューをキャッチできないために、獲得したスキルをどのタイミングで使ったらいいか分からないのです。

次に、スキルを使う前に衝動が優先してしまうタイプ。「貸して」と言うべき場面で、衝動的に相手のものをとってしまうなど、感情のコントロールがうまくいかない子どもです。
あとは、スキルを使うのをあきらめているタイプ。最初からうまくいかないと思い込んでいる子どももいますし、過去の苦い経験から、あきらめてしまった子どももいます。

あいさつしても無視される、「貸して」「手伝って」と言ってもどうせ相手に受け入れてもらえないと感じている子どもは、獲得しているスキルを使おうとはしません。ですから、スキル指導は、トレーニングの時間にスキルを獲得させればそれで終了、というわけにはいかないのです。

通級でアスペルガーの子どもがきちんとしたトレーニングを受けて、戻ったクラスで「ありがとう」と言えたのに、クラスメートに「何おまえ格好つけてるんだよ!」といった反応をされ、まじめさゆえにひとり浮いてしまうというケースが出ています。
一生懸命に学習しても、それが通用しない環境では、逆にいじめられてしまうわけです。

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