【連載】教師のためのセルフコーチング 1 自分らしい教師になるために

京都文教大学准教授 大前暁政

 

そもそもセルフコーチングとは何でしょうか。

セルフコーチングとは「望ましいゴールに向かって自分を導く心の技術」を意味します。もう少し詳しくいえば、「自分自身で建設的な反省を行い、軌道修正をしながら、よりよいゴールに向かって進むための心の技術」です。

反省だけなら、誰だってしているはずです。日々の教育活動が終わったら、自然と1日を振り返り、明日の教育に生かせることはないかを考えるはずです。

ゴールを考えたり、少し軌道修正をしようと思ったり、そんなことは、誰だって自然と行っているはずなのです。

それを、よりシステマチックにやろう、というのが、セルフコーチングです。

例えば、ある子どもが「学校に行くのが嫌だ」と訴えてきたとしましょう。

担任からすれば、これは一大事です。若い教師ほど「とんでもない事態が起きてしまった」とあせるでしょう。

「不登校になるのではないか?」「いじめが起きているのではないか?」

思考回路はどんどんマイナスの方向へ向かいます。心配とあせりで、結局、対応に遅れが出てしまいました。

別の教師は、同じ訴えを聞いたとき、どう考えたでしょうか。まず、冷静に訴えに耳を傾け、現状を把握するよう努めました。

次に、建設的に考えました。「大変なことが起きたけれど、でも、この子は教師に自分の気持ちをしっかりと訴えようとしている。急に学校を長期で休まれるよりも何倍もいい」

話に耳を傾けると、「学級のみんなから認められていない」気持ちになっているのが分かりました。

そこで教師は、自分の学級経営を冷静に振り返りました。

「自分の学級のよいところは何か」「自分の学級の改善点はないか」の2点です。すると、「少し学級経営の競争面を強くし過ぎていたな。もう少し、助け合いとか認め合いとかの学級経営の面を強くしよう」という気付きが得られました。

さっそく、上司や管理職に報告し、次の日から、学級経営のやり方を方向転換することとしました。また保護者にもこのことを伝え、担任として不行き届きであったのをわび、全力でこの子のことをサポートしていくと約束したのでした。

結局、迅速な行動が功を奏し、この子は「学校が楽しい」と言うようになり、保護者からの信頼も増したのでした。

このように、ある出来事が起きたとき、システマチックに軌道修正ができるのと、そうではないのとでは、雲泥の差になる場合がよくあります。

よく起こるのはマイナス思考です。「くよくよ」と考えてみたり、「何かとんでもない悪い事態に発展するのではないか」と心配してみたりといった思考回路に陥ることは、誰しもあります。これでは、悩みに遭遇するたびに、前進ができないといった事態にもなりかねません。

こういった思考のマイナス方向への進行と循環をなくし、より適切な方法を打ち出していくための、システマチックな思考回路をもつ。これこそが、セルフコーチングを学ぶ意味なのです。

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