【連載】教育のユニバーサルデザインにチャレンジ 24 中学校における視覚化② UD化プラス精神論

星槎大学准教授、日本授業UD学会湘南支部顧問 阿部利彦

 

私は、ソーシャルスキル(SS)を学ぶのに大切な点は3つあると思っています。それは「自己肯定感」「共感的理解」「他者視点取得」です。

「自己肯定感」とは「ありのままの自分を受け止め、自己の否定的な側面も含めて、自分が自分であっても大丈夫という感覚」だといわれています。失敗経験が多い、注意や叱責を受ける機会が多い、他者からのマイナス評価が多い子どもは、「自己肯定感」を持ちにくくなるのです。

SSを使うのが格好悪いという気持ち(前回を参照)だけでなく、自己肯定感が低いことによって、どうせ自分がやってもうまくいかないだろうと思ってしまうと、学んだSSを使うことができません。自分についてのプラスのイメージを持てないと、SSは使えないのです。

次に「共感的理解」ですが、特に発達障害のある子どもの中には、他者に共感することが非常に苦手な子がいますので、非常に難しい課題だといえます。人への共感というものは、共感された実体験がないと起こってきにくいものです。この子は共感性がないなとか、このクラスの子たちは共感性が弱いなとか感じたときに、「人に共感しなくてはいけないよ」などの堅い言葉で諭しただけでは効果は表れないと思います。

まず、教師の側が、その子どもたちに対してどれだけ共感的に言葉を返せるか、ということではないでしょうか。「○○君の気持ちになって考えてみたら、こうだと思うよ」などの共感的な言葉を、先生が意識的に返してあげることが大切でしょう。子どもたちの中には、先生の言葉遣いをまねする子が必ずいます。共感的な言葉を先生が日常的に使っていれば、同じように言い始める子が出てくる可能性があります。

「他者視点取得」は、相手の立場に立って考えられるようになることです。こういう感性を、先生自身がまず磨かなければならないと考えます。つまり、クラスの中に共感や他者視点の芽生えみたいなものが出てきたときに、それを確実に拾い、育てていくために、先生ご自身のアンテナを高くする必要があるということです。

子どもたちに対して「AさんがこういうふうにBさんのことを考えながら言ったことは、すごくよかったなあと先生は思うよ」というふうにさりげなく返してあげる。その中から子どもたちがだんだん学んでくれるということなのだと思います。

先生をお手本にしながらSST(ソーシャルスキルトレーニング)を学ぶことで、一人ひとりの子どもが「自己肯定感」を持つようになる、これが「集団的自己肯定感を育む」ことであると私は考えています。

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