Can-Doリストの現状と課題 実情に合わせて設定し系統性を

21世紀教育応援団『アイパル』代表 小松健司

 

英語教授法の教員研修
英語教授法の教員研修

文科省の検討会議がとりまとめた「英語力向上のための5つの提言と具体的施策」(平成23年6月)の中で、学習到達目標を具体的に設定する方法として取り上げられた「Can-Doリスト」。中学・高校卒業時の学習到達目標を4技能を使って「~することができる」という形で示したものだ。

提言から5年近く経ち、中学・高校では、どのように対応しているのか、現状と課題を探った。そこからは、各学校の実情に合わせた学習目標の設定や、小・中・高校の学習系統表作りなどの重要性が浮かび上がってくる。

導入率は高まった

昨年度、公立中学・高校3409校を対象に文科省が実施した調査によれば、Can-Doリストの導入率は、中学校で前年に比べて20ポイント近く増加し31.2%から51.1%に。高校では69.6%で、前年の58.3%よりも10ポイント以上伸びた。都道府県別では、全ての中学校で取り入れているのは11県、高校は21県であった一方、25%未満の県も中学・高校合わせて13県あった。

Can-Doリストを作成する上で参考になっているのが、Can-Doリスト導入の契機となった「ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)」の日本版「CEFR―J」があるほか、文科省が発表した「各中・高等学校の外国語教育における『CAN-DOリスト』の形での学習到達目標設定のための手引き」(25年3月)や各教科書会社が公表している解説書、英検が2万人超の合格者に実施した大規模アンケートをもとに作成したリストなどがある。

また兵庫、千葉、長野などの県教委がマニュアルを作成し、モデル例を示している地域もある。

このうち兵庫県教委は「兵庫版基本CAN-DOリスト」「兵庫版基本CAN-DOリスト活用ガイド」「教員のためのTo-Doリスト」を作成し、活用を図っている。

未消化にならぬよう

文科省の「手引き」では、まず中学・高校卒業時の学習到達目標を設定した。その上で、3年間で段階的に達成できるよう各学年の目標を系統的に設定し、それを各学年の年間指導計画へと反映させる。さらには教科書単元や授業ごとの目標、学習活動とその指導・評価方法に落とし込む、とされている。

具体的には、「どのような題材について」「どのような条件で」「どの程度」「どのような行動ができるか」との4要素に分解し、卒業時の学習到達目標を設置し、学年に応じて難易度が下がる学習到達目標に合わせて題材、条件、程度、行動を段階的に置き換えていく方法が考えられる。毎年度末には生徒の学習到達状況によって目標を適宜修正しながら、複数年度をかけて、完成度を高めていく取り組みが期待されている。

中学校3年生の「話すこと」の学習到達目標を次のように設定した場合では、▽日常生活の中で経験することについて(題材/例えば道を尋ねる)▽メモや原稿を何も見ずに(条件)▽5文以上で詳しく(程度)▽やり取りをすることができる(行動)――といった具合になる。

中2では、中3の「5文以上で詳しく」が「4文程度でわかりやすく」と、学習到達目標の難易度を一段階やさしい内容で設定する。
ただ、実際にリストの策定に携わる現場では、課題は少なくない。最も多く聞かれるのは、日常業務が増え続ける中で対応能力を超えるとの懸念の声である。

学習到達目標があまりに多いと消化し切れないので、設定する目標は各校の実情に見合う現実的に実行可能な範囲に留めるのが肝要である。また各教委が主導して、地域の成功事例や使用教材を積極的に共有するのが有効だろう。

教員間で共通理解を

Can-Doリストの作成は個々の教員がバラバラに行うのではなく、管理職のリーダーシップのもと、英語担当教員全員が共通認識をもって行うべきとされる。この点は教員によって指導方法や評価の捉え方について違いが生じないためにも重要で、生徒が英語を用いて何ができるようになるのを目指すのか、目標の基本概念を明確化して、教員間で共通理解を持つのが望まれる。

生徒や保護者に学習到達目標を公表しても、将来どう役立つのか具体的にイメージできないと、生徒の学習意欲を高めるのは難しい。
私の塾で指導した幼稚園教諭志望の中3女子生徒には、「最近はバイリンガル幼稚園がはやっていて、英語が話せる先生は人気だよ」と話したところ、俄然やる気をみせ、驚くほど急速に実力が伸びた経験がある。

中学校でCan-Doリストの導入が進行するのに合わせて、小学校5・6年生で行われる教科型の外国語学習を準備していく必要もあるだろう。基礎知識としてアルファベットの読み書きから始めるのが自然であるが、身の回りの物の名称や数字、暦などから挨拶や自己紹介、買い物など日常生活で使われる表現を用いて簡単な会話ができるようにし、中学校進学と同時にbe動詞の文章を学習できるようにしたい。

このような状況の中で、小学校教諭には中学校で何を学習するのか、中学校教諭には高校でどんな指導がなされるのか理解して、それぞれの指導計画を設定していくために、教委または文科省が主導して小・中・高校の接続を円滑に進める学習系統表を作成し、各校がそれを念頭に学習到達目標とCan-Doリストを設定することが望まれる。

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