【連載】特別支援教育Q&A 現場の真剣な悩みに学ぶ

「顔が見える」情報交換で

ロング連載となった『特別支援教育Q&A』を、この回で終了します。執筆してきた加藤康紀創価大学准教授に、連載を通しての感想などを聞きました。

――毎回、現場からの生の質問に答えているわけですが、特に、配慮したり苦労したりした点は。

連載を始めるにあたって、先輩教員や編集者と打ち合わせたときのことです。特別支援教育の質問でも、単に特別支援教育の制度や知識・技術の質問であったら、今の教育現場では、同僚や先輩、指導主事、カウンセラーなどから聞かれる。しかし、本当に聞きたいのは、個人的な悩みや職場では出せないような問題ではないか、との話が出ました。そこで、「人生相談」のような特別支援教育Q&Aを目指すことになりました。確かに、専門化された分野では、専門的な内容に注目してしまう場合が多いのですが、実際の問題解決は、共感や励まし、そして、視点を変えたアドバイスなどの方が効果を発揮するケースがあります。私の答えが、その趣旨に添えたか否かは、読者の評価に任せるしかありませんが、常に心がけてきたところです。

毎回の質問は、紙面でいただいた内容と、直接会って聞いた問題をもとにしています。人間関係などがからむ個別の事例や一般化しにくいもの、人権に関係する切実なものや緊急を要するものなどもありました。特に、現場の質問は、目の前での現在進行形ですから、どの質問も具体的で課題解決を急ぐものでした。それで、紙面に掲載するときは、了解を得て一般化する必要性があり、逆に抽象的になってしまう場合もありました。そこが苦労したところでしょうか。

――印象に残っている事例はありますか。また気が付いた点などは。

同じような質問に見えても、質問者が異なると全く違う問いになります。答えを考えながら、この分だとQ&Aは永遠に続くと思いました。今回、終止符が打ててほっとしています。印象深いというか学んだことは、どの教員も子どもたちのために真剣に努力している姿です。それに周囲の私たちが早く気づかなくてはいけません。

また問題解決についてですが、その人の時間と空間の、限られた範囲では解決されたとしても、別の人の問題解決に役立つとは限りません。例えば、ユニバーサルな授業がいいと理解して実施した授業が、他の人にとっては問題となってしまう場合もあるわけです。

やはり、質問は個々の主体となる質問者と対象の関係性、その時間と空間の変化の中で、その都度、新たに考えるものだと思います。読者から「私の事例とよく似ています。とても参考になりました」と、メッセージをいただくときがあります。それは事実かもしれませんが、その人自身の力や環境の力が大であって、たまたまQ&Aの内容がヒットしただけのことではないでしょうか。

――特別支援教育の現場の課題は変化しています。今後の課題は。

やはり、人権の問題だと思います。連載中に「障害者の権利に関する条約」が批准されました。さらに、先月(平成28年4月1日)には、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(いわゆる「障害者差別解消法」)も施行されました。

特別支援教育Q&Aとして、教師を主体にして、個人や集団、組織の問題などを考えてきたわけですが、真の解決のためには、社会全体、個々の人間の障害者理解・人間理解を推進する必要があります。障害者差別解消法リーフレットに「障害者差別を解消するために、関係者が話し合う場をつくり、互いに『顔が見える』関係ができれば、互いを理解しやすくなります」とあります。インクルーシブな教育環境づくりは、互いに『顔が見える』関係でなければ不可能です。

これまでの副籍制度や交流・共同学習などをさらに発展させ、さらに、通常の学校における特別支援教室などもその趣旨を認識して推進することが必要です。

私自身、このQ&Aを通して、多くの人たちと知り合いになれました。皆さまとの「顔が見える」情報交換が、事実としての特別支援教育Q&Aの成果であったと思います。ありがとうございました。

(おわり)

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