【連載】若手教師講座 特別編 新任教員の悩みに具体的に答える

授業づくり・学級づくり どう進めるか 執筆陣がアドバイス
「若手教師講座」がリニューアル
出席者
嵐元秀 東京都練馬区立仲町小学校主任教諭
栗原由紀子 東京都小平市立小平第六小学校主幹教諭
坂野真貴子 東京都多摩市立多摩第二小学校主任教諭
松井優子 東京都青梅市立第二小学校指導教諭
司会
梶井貢 (一財)総合初等教育研究所室長(連載・監修)

司会の梶井室長
司会の梶井室長

講評をいただいている連載「若手教師講座」が次回からリニューアルいたします。『新任教員の悩みに答える―授業づくり・学級づくりの基礎基本』と題し、新任教員が抱える悩みに、ミドルリーダーが具体的に答えていきます。今回は、執筆にあたるミドルリーダーたちに座談会を開いてもらい、新任教員の授業づくり、学級づくりなどへのアドバイスを聞きました。

梶井 新任教師はこんなことが大変そうだ、こんな悩みをもっているのではないか、このあたりを自分の経験と照らし合わせて、どのようにみていられますか。

松井 まず、授業をどうしていいかわからない、それに学級に大変な子がいて、どうまとめていったらいいのか分からない、など授業づくりと学級づくり両面あります。それに伴う保護者対応の悩み、そういうことがやはり多いようです。新任を指導する教諭もいますが、その人も担任をしているので、常にそばにいてあげられるわけではないです。子どもと一緒に遊ぶことはできる、でも、どう学級をつくっていったらいいのか、分からない、そのような迷いを感じます。

坂野 若い教員は時間の使い方が上手ではない、というか仕事量がものすごく多い。遅くまで仕事をしていたり、休日も出勤したりしています。すごく負担を感じていると思います。子どもとの距離感がうまくとれなくて悩んでいる様子もみられます。若いので、近くなりすぎるなど、どう距離を取っていいのか分からない。教師と子どもという関係をきちんと保って、言葉遣いなども気をつけ、けじめをつけて対応できるとよいのではないかなと考えます。

 授業では、これを教えれば分かるようになる、というポイントみたいなところがつかめないと言います。教材研究を積み重ねれば分かってくるのですが、指導書にはそういうことは載っていません。また、他の仕事と違うのは最初から責任が重い、ということ。担任として、他の教員と同じ仕事をやらなければならないということで負担感を感じている人もいます。保護者については、保護者会の進め方が分からないようです。自分もそうなのですが、他の教員の保護者会をみる機会はなく、自己流でやっていくしかありません。

栗原 自分の場合、3月末に教委に呼ばれ、すぐに採用と赴任先が決まり、何年何組の担任ということになりました。心の準備もないまま始業式や入学式を迎えて、戸惑うばかりで、こんな自分と出会う子は幸せなんだろうかとすごく不安でした。今の新任教員に聞くと、悩みは圧倒的に人間関係です。子どもと、保護者と、または同僚と、教員を辞めようと考えるとき、何かしら人間関係が絡んでいるのではないかと感じています。また仕事のコーディネートです。優先順位が分からないから、どれもトップスピードでやったり、どれも中途半端になったり、仕事がうまくコントロールできていないのが実態です。

梶井 指導上の問題点も数点に絞られてきた気がします。1つめは授業づくりで、授業がなかなかうまくできない。2つめは学級経営がうまくいかないこと。3つめが保護者対応。4つめが仕事量が多く、かつ責任ある仕事だけに負担感が強い、ということ。まず、授業づくりから対応策をうかがいたいと思います。

坂野主任教諭(左)と嵐主任教諭
坂野主任教諭(左)と嵐主任教諭

坂野 何か一つ専門の教科を決めて研究を深めるといいでしょう。一つの教科を集中してやることで他の教科に応用できるというところがあります。教科ごとに内容は違いますが、授業の組み立て方、進め方、ポイントのおき方などは参考になることが多いです。問題を見通しをもって解決していくという、基本的な取り組み方は学んでおくと非常に有効です。

 教科書や指導書の指導計画通りに進めなくてはならないという意識が非常に強くなっているように感じます。教科書通り、マニュアル通りに進めたがっているようですが、あの通りになるものではありません。指導書通りになるとは思ってはいけないのです。子どものためにこういうことがやりたいと思ったら、それを大事にして変えていってほしい。どこかに自分なりの何かを加えてみる。うまくいけば、それが自信になる。指導書通りにうまくいっても自信になりません。

松井 学年で資料をそろえたり、進度を合わせたりしても同じ授業にはなりません。授業というのは、子どもとのやり取りでつくられていくものです。模擬授業をさせるのは効果が大きいです。授業の前に模擬授業をしてもらって、発問の仕方、資料の持ち方、立つ位置から机間巡視の仕方まで全部手取り足取りで一回やってみると次の授業でうまくいったのかどうかがみえてきます。それを繰り返すと、授業が上手になっていきます。

栗原 本校では3年目くらいまでの教員が集まり、そこに主幹教諭などが入って、道場という名で研修しています。似たような経験だからこそ本音でいろいろ悩みが出し合えるなど、学び合える場になっています。逆にICTの技など若手から学ぶ場合も多くあります。保護者会で動画を用いて説明するなど、素晴らしい技術であり、これが効果的ということで自信につながっているようです。

嵐 新任教員にもタイプがいろいろあります。子どもたちを上手に仕切るのに慣れているみたいな若手もいます。そういう若手は特に何も言わなくてもどんどんやれて、おそらくそのような経験値が高いと思われる若手は、問題なく学級をまとめることができます。真面目だけど、集団を仕切って動かした経験がないというタイプだと、組織をつくる、システムをつくるということがよく分からないのではないかという気がします。

栗原主幹教諭(左)と松井指導教諭
栗原主幹教諭(左)と松井指導教諭

坂野 子どもたちとの関係をつくるのも、はじめからうまくいくわけではありません。成功したり、失敗したりすることもありますが、子どもたちとしっかり向き合って、自分の伝えたいことを伝えていくという努力から学級経営は始まっていくのではないでしょうか。こちら側が何をどのように思っているか、どういうことを伝えたいか、一人ひとりが理解できるようにていねいに取り組んでいくことが大事です。

松井 いろいろな子どもがいて、本当に腹が立ったり、憂鬱になったりしてしまいます。でも、私はあなたのことをかわいく思っている、あなたのことが好き、という気持ちを無理にでも思い続けていれば、子どもは絶対に帰ってきます。自分を好きな教師のことを、子どもは嫌いにはなりません。誠心誠意、子どもの話を聞き、一生懸命向き合うことが大事です。子どもと同じレベルになってはいけません。

栗原 決めたルールは守る。シンプルでもいいからこの約束だけはみんなで守っていこうねっていうことが大切です。ありきたりなルールだとしても、それをみんなで守るということが定着している学級は、子どもたちが納得して学級で過ごしているように感じます。担任は基本的にはひとりですが、ひとりで父性と母性両方を発揮しなければならないという場面もありますので、自分が母性派なのか父性派なのか分かっていて、足りないところは意識していくといいのではないでしょうか。

梶井 厳しいと言われる保護者対応についてお願いします。

栗原 保護者にとってはその子どもが一番かわいいわけです。対応するときは、その子のよさに触れたりして、いいところは分かっていると伝えることが求められます。最初から本題に入らずに、周辺の話から入って、徐々に本題につなげていくようにするとよいかと思います。

松井 若手教員にクレームのようなものがあったときは、会って話したほうがいいのか、電話のほうがいいのか、こちらから連絡したほうがいいのか、こちらの意図をどのように説明していくのか、若手と一緒に考えるようにしています。一人では対応しないように、話し合いは必ず学年主任や管理職に入ってもらって一緒に話を聞いてもらうようにしましょう。この面では、先輩や管理職に頼ってもいいのではないのか、と考えます。

梶井 若手教員の負担感や責任感の重さについてはどうでしょうか。

坂野 どのような仕事でもそうですが、優先順位をつけて仕事するのが大事でしょう。学年の仕事であれば、単学級でなければ、他の教員と分担できることは分担して進めていくとよい。担当した部分については提案するというような形をしていけば、仕事量は減らしていけるのではないかなと思います。学年経営がうまく進むような人間関係をつくられるとよいですね。

 学年主任によっては仕事を覚えさせるため、若手に仕事をどんどん振る人もいますが、やはり教材研究が若手にとっては優先です。事務的な仕事はあとからでも覚えられるし、その立場になればやるようになります。明日の授業が大事で、まず、そのことを考えさせたい。

梶井 最後に新任教員にメッセージを。

栗原 ストレスの根源は人間関係かもしれないけど、元気の素も人間関係です。人とのつながり、子ども、保護者、同僚や先輩、それぞれのつながりを大切にしてほしいと思います。そこが悩みの根源かもしれないけれど、逆にそこが自分を救い、支えてくれるところです。教師は、そのような仕事でしょう。

松井 愚痴を言える、くだらないことを言える同僚や先輩をつくってください。また、教員を目指して勉強をしていたときの「絶対、先生になろう」「子どものために尽くそう」という気持ちを決して忘れないこと。そうすれば何かあっても乗り越えられます。

坂野 常によりよいものを追求する姿勢をもち続けてほしいということです。教員の世界は、これが正解とかゴールとかがない職業だと思います。日々社会情勢も変わりますし、教育内容も変わっていきますし、子どもたちも変わります。目の前の子どもたちをみて、よりよいものを追求する姿勢をもち続けながら教員を続けていくということが大事です。

嵐 この人のような先生になりたいという、憧れる人をもってほしい。そこに向かってがんばっていけます。自校にいなければ、講座やセミナーなど学びの場はたくさんありますので、外に出て、そういう対象をみつけましょう。自分が教育実習のときに指導教官に言われた言葉がずっと心の中にあります。「教員になったら何があっても3年はやめるな。10年経ったら専門で何か書ける人になれ」と。その言葉は、今、私が実習生に送っています。

梶井 ありがとうございます。授業づくり、学級づくりに貴重なお話をいただきました。

次号からの新しい若手教師講座『新任教員の悩みに答える―授業づくり・学級づくりの基礎基本』にご期待ください。

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