【連載】今なぜ?ピア・サポートか 5 トレーニング(2)傾聴

静岡県立浜松江之島高校教諭 山口権治

 

前回は、初回のピア・サポートトレーニングとして、今後行う10回のトレーニングを円滑に進めていくために、ワークを通じて参加者同士の交流を深め、良好な人間関係を築くのをねらいとしました。ここでは、相互理解を深めるのを目的とした「傾聴訓練」について解説します。

傾聴訓練では「良い聞き方」と「くり返し」のスキルを活用して、話し手の事実・気持ちを熱心に聞き取るのを学習します。

「良い聞き方」では、話を聞いてもらえず、無視されるとどういう気持ちになるのかを体験してもらうために、まず「悪い聞き方」を取り上げました。はじめに、私とピア・サポーターで「今朝起きてから今までの行動」を「悪い聞き方」のモデルで行います。話し手からは「聞いてもらえていないので悲しい」「こっちを向いてよ、と言いたい気持ちになった」という感想が出てきます。

参加者に「悪い聞き方」の特徴を聞くと、「目線が合っていない」「足や腕を組んでいる」「身体が話し手に向いていない」「無表情」「うなずきがない」などの意見が出ます。これらの意見を板書します。

次に、参加者同士でペアを組み、ロールプレーを行い「悪い聞き方」を体験してもらいます。ここでも「イライラする」「悲しくなる」「空しい」「怒られている」などの感想が出ます。

そこで、板書に記した表情や動作の反対を行えば、良い聞き方になるのではないかと提起し、続くワークとして「目線を合わせる」「足や腕を組まない」「話し手の方を向く」「笑顔になる」「うなづく」ように行動や表情を変え、再びロールプレーをやってもらいます。

すると話し手から、1分間行った「良い聞き方」の方が、30秒の「悪い聞き方」よりも時間が短く感じるという意見が出ます。ここでは、2つのワークを通じて、聞き方次第で話し手が話しやすくなるのを実際に体験し、“聞く(聴く)”ことの大切さを学んでもらいます。

次に「くり返し」に取り組みます。まずプリントを使い、筆者とピア・サポーターで「くり返し」のモデルを行います。最後には感情を推測して付け足します。

続いて、参加者がペアを組み、モデルと同様の体験をしてもらいます。参加者からは「聞いてもらっている感じがして、うれしい気持ちになった」「聞き手に対する信頼感が生まれる」などの感想が出ます。

そこでまとめとして、「くり返し」のメカニズムを板書で説明します。対話においては、「話し手」は「聞き手」に話すと同時に、〝話し手自身〟にも話しています。

ここで「聞き手」から鏡のように同じ言葉を返されると「話し手」は自分の話を「聞いてもらえている」と感じ、それが「分かってもらえた」という実感につながるので、「聞き手」に対する信頼感が生まれます。

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