【連載】いつからいつまで特別支援 第12回「個別指導計画」誕生秘話(その②)

臨床心理学士 池田敬史

 

「個別指導計画」に大きな影響をもたらした米国の状況にふれておきます。

1975年、米国連邦法の「全障害児教育法」(Education for All Hndicapped Children Act)では、全ての障害児は可能な限り、最も制約の少ない環境(LRE=the Leastrestrictive  restrictive environment)で教育を受けることを、制度として全州に実施を義務付けました。すなわち、障害児はできるだけ通常の学級で教育しなさいと法が規定したわけです。

この法律では、障害児にはIEP=個別教育計画を用意すること、その作成のために関係者からなるIEPミーティングを開催し、そこには保護者も同席して意見を述べるという条文も加味されました。

障害児は本来、障害のない子と同じ環境で教育を受けるべきであり、そのための計画は個別に用意されるべきであるという、その後の世界の教育の潮流を作ったといってもよい、画期的な法でした。

1975年法は、その後何度かの法改正を重ね、1990年にはIDEA=障害のある個人教育法(The Individuals with Disabilities Education Act)が成立。現在はこのIDEAに基づいて障害児サービスが展開されています。(2004年改正法)

1975年法では、教育の場へのアクセスが主なねらいでしたが、1990年法では、より個人に焦点を当て、個々の障害児にとって適切な教育と、その教育の結果や評価が大切にされるようになっています。

IDEAの示す6つの原則があります。(1)無料で適切な公教育(2)適切な評価(3)個別教育計画(4)最も制約の少ない環境(5)意思決定における家族と生徒の参加(6)不服申し立て手続――。

これらの原則が適用されるためには、まず、州は特別支援教育と関連サービスを必要とする障害のある子どもを全て特定し、どこにいるのか探し出し、評価しなければなりません。これは“Child Find”(子ども探し)と呼ばれます。子どもが特定されると評価のための委員会が召集され、障害が疑われた全ての領域にわたって子どもの評価が行われます。評価結果をもとにIDEA法に基づいて、6つの原則サービスが受けられるかを決定します。親はこの決定に不服申し立てができ、委員会にセカンドオピニオンも求めることもできます。

そのサービスとは次のようなものです。

0、1、2歳では、障害が分かると家族に支援コーディネーターがつき、個別家族支援計画が作成され、PT(理学療法士)、OT(作業療法士)による訓練やレスパイトケア(ケアをしている家族を癒やすため、一時的にケアを代替し、リフレッシュを図ってもらう家族支援サービス)などのサービスが用意されます。

3~5歳では、就学前のプレスクールのためのIEPが作成されます。3~21歳まではIEPに基づいて教育され、14歳からは学校卒業後の移行支援サービスが加わります。IEPは法的拘束力をもった計画です。日本の指導計画の作成とは比較にならないほど重い権限が付与されています。

LREは、アメリカの特別支援教育の根幹をなす哲学といってもよいと思います。

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