【連載】学び合いで実現するアクティブ・ラーニング 第4回 経済界はなぜ口を出すのか

上越教育大学教職大学院教授 西川純

 

前回、書きましたように、アクティブ・ラーニングの本体は経済・産業界からの要請に基づくものです。しかし、なぜ経済・産業界は教育に口出しをしてきたのでしょうか。

日本の雇用の特徴は終身雇用です。終身雇用とは、景気が悪くてお金がなくても雇い続けることです、無茶です。そのため、このような雇用をしている国は他にありません。では、なぜ日本は終身雇用が成り立ったのでしょうか。それは、1950年(昭和25年)代の高度成長期からずっと好景気が続いていたからです。不景気になっても、しばらくすると好景気になるのが期待できたからです。

しかし、時代は変わりました。中進国が日本のお家芸としていた産業で売り上げを伸ばしています。日本の戦後を支えてきた企業が経営危機に陥っています。さらに、少子高齢社会がどんどん進行しています。日本のGNPの大部分を占めているのは内需です。ところが、人口はどんどん減り、高齢化が進みます。現在1億3千万人の人口は、今世紀末には8千万人になり、65歳以上人口は現在の26%から35%に増加します。

つまり、内需が減少するのです。景気は回復しません。そのことに、経済・産業界はかなり前から気づいていました。なぜなら、20年後の20歳の人口は、今の0歳の人口によって正確に予想できるからです。

今から20年以上前に日経連は「新時代の『日本的経営』―挑戦すべき方向とその具体策」を発表しましたが、そこには幹部候補生の1割以下は終身雇用ですが、それ以外は有期雇用にする方針が打ち出されています。中高年のリストラ、非正規雇用の増加はその頃からの方針なのです。

毎年4月になると、新採用の若者が企業に採用されます。さて仕事ができるでしょうか。彼らは大学では枕草子や位相幾何学を学んでいましたが、実務を学んでいません。当然、働けません。

そのため、企業は数年にわたって研修を積み上げます。ところが、その若者に満額の給料を与えています。冷静に考えれば、仕事もできない若者に、給料を与えて教えているのです。どう考えても割が合いません。しかし、終身雇用では帳尻が合います。若い頃の投資が後々返ってきます。

ところが、有期雇用では成り立ちません。教えて仕事ができるようになると、自分を高く買ってくれる企業に移ってしまいます。

従って、企業は即戦力を求めるようになったのです。今まで大学や高校は「大人にする」という部分を企業に丸投げしていました。しかし、企業が拒否し始めたのです。総務省の「平成24年就業構造基本調査」によれば、高校、大学を卒業した人の4割は非正規雇用なのです。そして、毎年、その割合は1%程度上昇しています。非正規雇用の人の年収は170万円なのです。

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