【連載】新たな教育への提言 第3回 自己決定力育む教育が重要

(株)THINKERS代表取締役 山内学

 

6月上旬、高校在学中に起業した学生起業家と海外大学進学者をスピーカーに招いたセミナーを開催した。学生起業家の方は、1人は難関大学に進学、1人は受験準備、もう1人は大学に進学せず事業に専念していた。いずれも進学校出身。海外大学進学者の2人も、国内の有名大学に進学できる学力のある層だ。

ここで、「勉強↓いい学校↓いい会社・いい職業」というテンプレートを題材にしてみたい。いい学校とは「偏差値の高い大学」であり、いい会社とは「大手企業」、いい職業とは「医師・弁護士」といったところだろうか。

確かに、特定の大学や会社・職業に対する一定の社会的信用はある。だが、「いい会社・いい職業」が「いい人生」に一直線につながるだろうか。「いい人生」の定義は難しい。収入なのか、やり甲斐なのか、社会的評価なのか、安定なのか、自由なのか、家庭なのか、一概にはいえないからだ。

連載初回に社会と教育の接点を取り上げたが、今回は個人の人生と教育の接点を取り上げたい。

期待に生きる子どもがいる。親の期待、教師の期待、「あなただったらこうなって当然」という世間の期待、そうしたさまざまな期待に応える形で勉学に励む。故郷に錦を飾る時代は、確かにそうだったかもしれないが、こうした景色は、「あなたのため」といって、上司が部下に自分の都合を押し付けるCMに通じるものがある。

1ついえるのは、「いい人生」は他人が決めるものではないということだ。「いい人生」は、自分で決めるものだろう。

掲題の「自己決定力」とは、自分で自分のことを決める力をいう。「何を当たり前のことを」と思う方もいるだろう。しかし、就職・転職において「親ブロック」「嫁ブロック」といった業界用語があるように、周囲の反対にあって内定契約を一方的に破棄する事例が存在し、ちょっとした社会問題になっている。要は、自己決定力が欠けている証左だろう。

先のセミナーの出席者の1人に、今秋ハーバード大学に進学する女性がいた。彼女は幼少期、いくつかの幼稚園を親御さんと一緒に回って、「どの幼稚園に行きたいか」を問われたという。そこで彼女が選んだ幼稚園は、結果として楽しかったそうだ。その後も、選択する場面では彼女自身に意思決定が求められたという。選択の結果、思い通りにいかなかったとしても、それは自分が決めたことだから納得できたという。ハーバード大学を受験したことも、親御さんは後から知らされたそうだ。もちろん、事前に進学予算は伝えられていて、奨学金なども加味した上で、自分で調査・決定している。

人の言うことを素直に聞くだけでは、そうした自己決定力は養われない。子ども自身に決定させ、それに責任を持たせる「大人扱い」が重要だ。もちろん、決定のためには、機会や情報が必要であり、そうした環境(ネットワーク)を用意するのは、大人の役割だろう。

前回の連載で、21世紀の新5教科「REACT」を提案した。Research(研究)、English(英語)、Active(活動)、Creative(創造)、Technology(技術)の略だが、これにInformation(情報)、Opportunity(機会)、Network(ネットワーク)を加えてREACT―IONと呼べる仕組みをTHINKERSでは提供していきたい。

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