【連載】学び合いで実現するアクティブ・ラーニング 第5回 “やったふり”はできません

上越教育大学教職大学院教授 西川純

 

私たちの年代であれば、総合的な学習の時間の導入前の騒乱を、はっきりと覚えていると思います。本屋に行けば、本棚の1つ2つは総合的な学習の時間に関する本で埋められていました。ある学校が総合的な学習の時間の研究発表会をすれば、日本全国から人が集まってきました。

さて、今はどうでしょうか。本屋にある総合的な学習の時間の本は10冊程度しかないのではないでしょうか。なぜでしょうか。総合的な学習の時間と銘打った研究会が最近ありましたか。

総合的な学習の時間の理念は、アクティブ・ラーニングと同じことを求めています。従って、革命的にそれまでの授業とは違ったのです。当然、できる人は多くありません。総合的な学習の時間が実際に始まってみても、多くの教師は、今までの焼き直しをしました。ところが、周りの人もそうなので「な〜んだ」となったのです。

道徳の教科化が話題になっています。さて、大きな本屋に行って道徳の本を探してみてください。それほど多くはないですよね。今、商業的にペイしている道徳の本は、小学校、中学校で1冊ずつなのです。なぜでしょうか。総合的な学習の時間と同じように、そこそこで道徳科はなんとかなると思っているからです。具体的には、教科書を今までの副読本と同じように使い、要録を少し詳しく書く程度で大丈夫だと思っているからです。

文部科学省は今回のアクティブ・ラーニングに関して、そのような轍を踏まないように、大学試験制度を変えるという禁じ手を、あえてしました。

今のところ、センター入試に替わる試験でどのような問題を出すか、それを年何回やるか、コンピュータ採点をするかレベルのことが議論されています。しかし、最も大事なのは、大学入試センターのテストでは合否は決められず、大学独自の試験の比重が高まる点です(詳細は付記を参照してください)。大学が異なった試験を行い、それで合否を決めるならば、一律の偏差値という物差しが使えなくなるのです。

そして、次回に説明しますが、大学として生き残るためには、アクティブ・ラーニングをしなければならず、従って、アクティブ・ラーニングの教育に耐えられる子どもを選抜しなければならないのです。それを大学独自の試験で行います。

学校がアクティブ・ラーニングをやったふりでごまかせば、それは入試の結果ではっきりと出ます。

従って、ごまかせないのです。

付記=試験制度の詳細は『2020年激変する大学受験』『学歴の経済学』(学陽書房)、『アクティブ・ラーニング入門』(明治図書)に。

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