【連載】今なぜ?ピア・サポートか 10 人と人をつないでいく

静岡県立浜松江之島高校教諭 山口権治

 

参加者それぞれに効果を及ぼしたグループワーク
参加者それぞれに効果を及ぼしたグループワーク

ピア・サポートのトレーニングを受けた高校生約15人が、近隣のK中学校の1年生約30人に、ピア・サポートトレーニングを行い、そのトレーニングを受けた中学生が新年度に入学する予定の小学校6年生に、高校生から学んだワークを実施して交流を深めるという実践を行いました。

この取り組みのあらましを、服装違反や深夜徘徊などの問題行動が目立つ中学生のA君の変容を中心に紹介します。

A君は、この活動を通じて同じような家庭環境の高校生のB君と仲良くなりました。2人の姿は兄弟のように親しげに見えました。A君の熱心な参加は、中学校の先生を驚かせました。

トレーニング終了後、A君はスクールカウンセラー(SC)に自ら面談を申し込み、1時間、機関銃のごとく自分のことを語ったそうです。SCからは、悩みを語ることで行動が建設的になるきっかけになるのではないかという連絡をいただきました。

90人の小学生を招いて行われた交流会では、中学生約30人がリーダーとなり、声を出さずに全員で誕生日順に並べかえる「バースデイライン」、互いの距離を縮める自己紹介、最後に「ケンカの仲裁」実演を披露しました。

交流会の中でA君が、小学生の世話をする姿が印象的でした。A君は「バースデイラインは練習ではうまくいかないこともあったけれど、周りを見ると笑顔でやってくれて安心した。その人のタイプに合わせて話すといいな、と思った」「ピア・サポートは、人と人をつなぐ言葉」と取材に来た記者に語り、中学校の先生方をびっくりさせました。

その後、彼は遅刻や早退の数が減り、意欲的に学校生活を過ごしているそうです。SCからは「ピア・サポートという認められる場を与えられたことで自己肯定感が上がり、問題行動を起こすエネルギーを社会的に認められる活動に使っていると感じています」とのコメントいただきました。

「高校生がモデルを示してくれたので、うまくやることができた」「高校生が優しく話しかけてくれるので、安心して取り組めた」などの中学生の感想から、中学生にとって高校生が頼りになる存在となっており、それが中学生に安心感を与えていると思われます。

活動終了後に、高校生に対して「ありがとうございました」「また来てください」と中学生が声をかける場面が見受けられ、これは高校生の参加者に、自分は役に立っているという自己有用感を与えたと思われます。

これと同様のことが、小学生と中学生の交流会でも起きたのではないかと思われます。

このように、異年齢の交流によって、世話をする・されるという関係が自然に生まれ、人と接することは楽しい・人と関わりたいという感情、コミュニケーションを取る前提となる取り結ぶ力が内から湧き出てきたからではないかと思われます。

こうした感情がA君の心に影響を与え、自己肯定感を向上させ、生活を改善させたのではないかと考えられます。

今後は、年代を超えたピア・サポート活動を通じて、良好な人間関係を構築していく力を育てていきたいと考えています。

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