【連載】学び合いで実現するアクティブ・ラーニング 第7回 義務教育で広範囲に影響

上越教育大学教職大学院教授 西川純

 

平成27年の前半、文部科学省の小学校担当のある方がある会合で「アクティブ・ラーニングは大学入試だから小学校は関係ない」と発言したと聞きました。少なくとも文部科学省の内部においても、温度差があるのだなと理解しました。

中学校や小学校の先生方が危機感を持たないのは当然です。

しかし、関係します。いや、むしろ義務教育の方が広範囲に影響を受けます。

スーパーグローバル大学のトップ校に選ばれる大学は、否応なく入試をアクティブ・ラーニング化します。ところが、大多数の大学は、そのような手間をかけないでしょう。現状の方法を限りなく維持して「○○方式」というネーミングによって新規性を出します。

その大学に入学するのであれば、今のままの教育でも可能です。それに、高校生の半数は大学に進学しません。つまり、トップ校に生徒を入学させようとする、「一部」の進学校だけが直接に関わるのです。

さて、「一部」進学校は進学実績を上げるためには、アクティブ・ラーニングに対応します。そのためには、アクティブ・ラーニングに対応できる生徒を選抜する試験を行うことになります。そうすれば、中学校は否応なく対応しなければなりません。

トップ校は13校です。しかし、その13校に生徒を入らせようとする高校はその20倍ぐらいあります(日本全国の普通科高校2600校の1割ぐらい)。では、その高校に進学させようとする中学校はどれぐらいでしょうか。
100%です。

今、受験情報に関して最もアンテナの高い保護者は誰だかご存じですか? 小学校高学年の親です。なぜなら、本格的に受験対応するためには、教員が異動せず、中長期で受験対策を立てられる私立中高一貫校が有利であるのを知っています。その情報がママ友ネットワークで広がるのです。

想像してみてください。ある日、保護者から校長に面談の希望が寄せられました。保護者は医者、弁護士等で、普段から学校運営に協力的です。地域のキーパーソン、PTA会長の経験者も含まれています。

その保護者から「本校のアクティブ・ラーニング(もしくは、特色入試等の地域の進学校のアクティブ・ラーニング用の試験の名前)への対応は?」と質問されます。保護者はわが子のために必死に情報収集しています。もし、校長が入試に関わる基礎的な知識を持っておらず、話し合い活動の充実程度のアクティブ・ラーニング対応を説明したら、保護者はどう思うでしょうか。

義務教育こそ、必死になるべきだと思います。

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