【連載】新たな教育への提言 第6回 2030年の社会と子供たちの未来

(株)THINKERS代表取締役 山内学

掲題の「2030年の社会と子供たちの未来」は、中教審初等中等教育分科会(第100回)配付資料「教育課程企画特別部会 論点整理」からの引用である。2030年といえば、今の高校1年生が30歳になる年。2030年に30歳になる人が、今どんな教育を受けるべきか、そういう観点を持って現場に立っている先生は、どれくらいいらっしゃるだろうか。

悲しいかな、当社が運営している10代の教育用SNS「THINKERS」を教育関係者の方に案内すると、「私はSNSをやっていないので、生徒には紹介できない」という類の反応がある。自身の経験に基づく教育・判断は、現行制度上の適合性はあるだろうが、将来性はどうだろうか。子供たちは我々より四半世紀先の未来を生きる存在であるのだから、最先端の環境においてあげるべきだ。

AltSchoolという学校をご存知だろか。Google(現Alphabet)の元エンジニアが2013年に設立し、今ではサンフランシスコやニューヨークシティなど、全米3地区で9校舎を展開している私立学校(日本でいう幼稚園から中学校まで)である。Facebook創業者のザッカーバーグ氏などから1億ドル(約100億円)以上の投資を受けているシリコンバレー流のスタートアップ企業でもある。

AltSchoolの最大の特徴は、パーソナライズ教育と教育システム開発を並行して進めていること。前者はアダプティブ・ラーニングとも称されるが、個々人に最適化された教育が受けられるようにしている。そして、そのシステムを開発するエンジニアも同校にいるので、まさに教育現場と教育システム開発が一体化した組織となっている。最先端のエンジニアが最先端の教育システムを開発し、最先端のイノベーションを生むシリコンバレーから教育を変えようとしている。そんな風がアメリカ西海岸には吹いている。

翻ってわが国はどうだろうか。小学校からの英語教科化やプログラミング教育の実施、センター試験廃止による新しい大学入試制度への移行など、矢継ぎ早に教育改革の指針が出されている。まさに、2030年の社会を見越した動きだろう。

そんな中、準備不足や教員の負担増が指摘されている。今の学級規模での一斉授業を前提とするなら、それも理解できる。ただ、AltSchoolのようにテクノロジーをうまく使えば、教員の負担も減るはずだ。今のように教員が終始教壇に立ち続けなければならないのか。「そもそもそれが最善なのか?」という問いを投げかけたい。

例えば、テーマごとに教室を分けて、生徒はカフェテリア方式でその時やりたいテーマの教室に入り、各自の理解度に応じたプロジェクトに取り組み、教員はそれをサポートする。誰が何を学んでいるは、eラーニングやeポートフォリオのシステムで管理する。その方が学習履歴の蓄積ができ、他の教員との情報共有もできる。今時、チャイムに従って従業員の行動を管理する企業の方が少ないだろう。学校が一律にそうなっているのは、時代錯誤といわざるをえない。

「そんなの無理」という決めつけが、教育と子供の未来を奪ってはいないだろうか。「今できない」「自分ができない」のを言い訳にせず、「今できるなかで最大限やる」「自分・自校ができないなら、外部の人材・サービスを活用する」選択をしていただきたい。

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