【連載】新・探偵がみた学校といじめ 実態を把握するために 第1回

NPO法人ユース・ガーディアン代表理事 阿部泰尚

 

著者の本業は、探偵。保護者の依頼で、プロである探偵業のノウハウを活用し、客観的ないじめの実態を調査、レポートを作成するなどして数多くのいじめ問題の解決に寄与しています。新連載では、いじめをどう把握していくか、そのポイントに焦点を当てていきます。いじめ相談は、NPO法人ユース・ガーディアンを立ち上げ、社会貢献活動としていじめ問題の解決に当たっています。同法人URL=http://ijime-sos.com/

早速だが、事例を挙げながら、私が解決してきたいじめについてのポイントを解説していきたい。

私は探偵を育てているが、その中で、常に「先入観を持つな」と教えている。これが全ての調査の基本的な土台となっている。

いじめの相談の多くは母親からの電話で始まる。次の事例は、母親から、小学生の子供の持ち物が学校で壊され、汚されているのに、学校が何もしないという相談である。この被害は実に酷いものであった。

上履きだけでいえば、5度切り刻まれ捨てられ、2度も「ブス」「学校くるな」と落書きされていた。

直接面談に出向いた私は、母親から再度聞き取りし、時系列で出来事を整理した。次に子供から話を聞き、被害品をチェックした。被害の状態から、頻繁に物壊し、物汚しが行われているのが分かった。

被害児童によると、クラスに問題を起こしている男子がおり、担任はその子に嫌疑をかけているようだとのこと。しかし、被害児童はそう考えてはおらず、私も先入観をもたずに調査にあたる。

私は、相関図と実行シミュレーションを作成した。この作成には、心配してやってきた別のクラスの幼なじみの2人にも協力してもらった。

子供が3人も集まり、友達のあれこれを話させれば、実に騒がしい。私の役目は、ここでは司会者であり、話が別方向に流れないよう方向性をつけるだけである。

ちょうどその日、学校からの定期連絡があったので、私は電話を代わってもらったが、クラス担任からは「やった子はわかっている。あなたの出番はない」と冷たく言い放たれた。
 
しかし、シミュレーションによれば、彼には常にアリバイがあったし、被害者との接点はクラスメートという点のみで、対立するような要素はない。

ここでのポイントは、頻繁に発生している行為において、その全てが可能な人物と、被害者との関係性を淡々と明らかにすることである。この考察をする場合、子供にとってどういうことかという観点のみが重要である。そのため、私は相関図を作るのだ。その作成においては子供たちの裏の顔も表の顔も全て書き込むようにする。子供でも表裏の顔を持つし、対する人により対応を変えるものである。

その結果、唯一この行為が可能であったのは、クラスの代表ともいえる成績優秀な女子児童とそのグループであった。被害者はあるコンクールで賞をもらっているが、その顛末をめぐって、両者にわだかまりがあった。つまり、因果関係があったのだ。

この結果を伝えた際に、母親は大いに驚いていた。きっと、大人は誰もが想定していなかったことであろう。ところが、子供たちは、大いに納得した様子であった。やはり、加害者は表と裏を使い分けていたのであろう。

結果、これが噂となって、注目された女子児童は自白し、保護者を伴って謝罪・弁償をした。

担任は驚き、ショックを受けていたそうだ。担任は、彼女らのグループを信頼していたのだろう。信頼は人間関係には必要で大切なことだ。しかし、多くの事件は魔がさした結果であり、先入観を除いた客観的な判断が重要となるのである。

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