【連載】学校教育相談の歩みと展開 第15回 ソーシャルスキルトレーニング

函館大谷短期大学名誉教授 保坂武道

 

■SSTとは

ソーシャルスキルトレーニング(SST)は、良好な対人関係を築いていくためのもの。「社会的スキル(技能)」を身に付けるトレーニングである。社会生活の中で良好人間関係を取り結ぶために身に付けておきたい生活技能や態度でもあるといえる。

中には、「スキル・技能」との言葉に抵抗を感じる人もいる。いわば「要領のよさ」や「ずるがしこさ」や「心を伴わない技術」を身に付けるのかといぶかしく思う向きもある。もしそうであるならば、「なんと浅はかな」というたぐいの思いである。

SSTは、もとよりそのような意味ではない。
社会生活において、円滑な人間関係を営むための「基礎・基本の知識と技能・態度」を身に付けさせるのを目的としたものである。社会の中を巧みに泳ぐ回る類いの術を学ぶのでは、決してない。

それならば、学校教育ではなく、むしろ家庭教育の領域だとの言い方もできる。本来はそうだと思う。しかし、家庭や地域の教育力が低下している昨今、学校教育でそれを補うしかない。

■視点と手法のポイント

SSTの視点や手法のポイントを挙げると——。

(1)対人、人との関わり方を知識と体験で学ぶ。
(2)体験の積み重ねで学習する技法で、認知行動療法の1つである。
(3)SSTの基本原理=▽教えられ▽まねをして▽試してみて▽結果から学ぶ——である。
(4)SSTの進め方は、▽インストラクション(教示)▽モデリング(模倣・真似)▽リハーサル(ロールプレー)▽フィードバック(検証)▽一般化(活用)
(5)基本的なソーシャルスキル=▽あいさつ▽自己紹介と他者紹介▽上手な聞き方▽質問する▽仲間の誘い方・断り方▽褒める▽人の感情を理解する▽怒りをおさえる▽ストレスに対処する▽問題を解決する▽人を励ます——など。
(6)SSTでは何をトレーニングするのか=▽相手の反応を読み取る▽意思決定の具体的な過程をトレーニングする▽自己主張訓練・系統的奪還法(不安や恐怖を段階的に解消する)▽どのように振る舞えば良いのか——など。
■学校で実施されるSSTの基本的な展開
(1)インストラクション(教示)=▽教えたいスキルとねらい▽学んだときのメリットとスキルが欠けているときに起こる展開——を教示する。
(2)モデリング=モデルを示し、観察させ、真似をさせる。
(3)リハーサル=▽教師・子供によるデモンストレーション▽写真、VTR、マンガ、絵本を見ての話し合い▽ロールプレー——を行う。
(4)フィードバック=▽インストラクションに従って実行した行動、モデリングやリハーサルで示した行動に対して、適切である場合には褒め、不適切な行動レベルについては修正点を示す。
(5)定着(一般化)=▽教えたスキルが日常の実際場面で実施されるよう促す▽学校から家庭や地域に広げる▽クラスの友達から子供やきょうだいや周囲の大人に広げる。
■SSTのいろいろ
(1)発達の違い=幼児、小学生、中学生、高校生に留意。
(2)問題の違い=攻撃性、引っ込み思案、発達障害など、問題特性の違いに応じる。
(3)保護者に向けたSST=保護者にも多様なニーズがある。子育て支援、子供の反抗期、子供の問題行動などに応じたトレーニングを実施する。

総じて、SSTでは何を身に付けさせたいのか、そのためにはどんなトレーニングが必要で適切なのかを、常に明確に押さえておこう。生きる力は、適切なスキルを身に付けることによって発揮される。学校で実施されるSSTは、学級経営、生徒指導に生きていく。教科指導にも良い効果をもたらす。生きる力を子供たちに付けさせるのである。

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