【連載】アクティブ・ラーニングとICT活用 ③ 学生が園児とICTで交流

講師としての立場が学生の倫理性を涵養する
講師としての立場が学生の倫理性を涵養する

文教大学教授 今田晃一

大学から始まったアクティブ・ラーニング(能動的な学修)であるが、教員による一方的な講義形式の教育からの脱皮を目指し、議論やディスカッション、グループによる討論など多様な授業形態の実践が試みられた。それから2年ほど大学におけるさまざまなアクティブ・ラーニングの実践について、関連の書籍も多く出版されるようになってきた。そして当然の反動として、ただグループで活動するだけでいいのか、相互啓発はあっても深まりがないのではないかという批判が出るようになった。

そんな中、「大学での学習は単にアクティブであるだけでなく、ディープでもあるべきである」とのメッセージとともに松下佳代京都大学高等教育研究開発推進センター教授の『ディープ・アクティブ・ラーニング、大学授業を進化させるために』が出版された(2015年1月初版、勁草書房)。そのプロローグの中で松下教授は、ディープ・アクティブとは「学生が他者と関わりながら、対象世界を深く学び、これまでの知識や経験とを結びつけると同時にこれからの人生につなげていけるような学習のことを意味する」と定義した。

そこで筆者は、保育士や幼稚園教諭を目指す学生を対象に「デジタル教材論」で、ディープ・アクティブ・ラーニングを計画し実践した。ポイントはデジタルネイティブである学生が幼稚園を訪れ、最新の「幼児教育におけるデジタルの可能性」をグループ学習で30分間の園児との交流の中で実演し、提案する。そしてそれはそのまま地元の幼稚園の先生方のICT研修の場とするという発想である。

提案する主な内容は、文部科学省プログラミングによるオープニング、アプリ(Baby bus)やNHK For School等の幼稚園教育要領に即したデジタルコンテンツの活用、iPad対応のオリジナルデジタル教材での展開、ムービーによる振り返りであり、いずれも大学で学んでいる最新の技能である。

結果、学生の自己評価では「今まで大学で学んできた幼児教育の内容が実際に役に立った」「実習前に自信ができた」「これからも授業を休まずいろいろと身に付けていきたい」等、まさにこれからの人生につなげていけるような学習、ディープ・アクティブ・ラーニングの場となった。

ひとつの指標ではあるが履修者60人の授業評価(無記名)は、履修者全員が総合評価で最高点をつけ、主体的、協働的、創造的に取り組めたと自己評価も高い。学生はデジタルの面では幼稚園の先生方の講師であり、プライドもその主体性に寄与したであろうが、筆者は「倫理性」こそがディープ・アクティブ・ラーニングのキーワードであると実感した。

幼稚園の先生方からは、最も学びたい内容として「プログラミング」が挙げられたことが印象的である。デジタルネイティブ世代の良さである協調性、倫理性をICTで促進したい。

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