【連載】学校教育相談の歩みと展開 第16回 対話のある授業をデザインする

函館大谷短期大学名誉教授 保坂武道

 

■授業に生かすカウンセリング

対話のある授業デザインとは、授業にカウンセリングの手法を生かすことである。なぜならば、カウンセリングの本質は、対話だからである。教師の一方通行ではなく、互いに語り合いながら問題を発見し、解決策を見いだしていくのがカウンセリングである。

教育カウンセリング学会で指摘しているのは、具体的に、次の5項目である。

(1)おもしろくて、ためになり、学問的背景を取り入れた授業を工夫する。知的好奇心をゆさぶる。
(2)児童生徒同士のシェアリングを取り入れる。相手との話し合いに気付きを生じさせる。
(3)インフォームド・コンセント(説明と同意)を取り入れた導入をする。それを、授業の「導入—展開—結末」という流れの導入に概念を置き換え、授業は、教師と児童生徒との双方によるものであると位置付ける。いわば、学習指導でいう学習レディネスであり、モチベーションを高めるために配慮することである。
(4)ワークショップまたは体験学習が可能なら、それをプログラムに入れる。グループでの話し合いと個人と集団の中で良好な人間関係を築く基になる。
(5)時折、授業の内容と方法について、児童生徒からフイードバックをとる。授業についての意見や感想を求め、授業改善の手立てとして役立てる。
■方法論
(1)授業に生かすカウンセリングは、どのように身に付くのか。構成的グループエンカウンター(SGE)を学び、実践するのも1つの方法である。SGEの流れは、「インストラクション—エクササイズ—シェアリング」の三本柱から成る。
(2)インストラクションは、エクササイズの導入における説明・デモンストレーションを指す。授業では、導入に当たる。
(3)エクササイズ
SGEを構成する主要な要素であり、心理面の発達を促す課題をいう。授業では教材に当たる。
(4)シェアリング
分かち合いの意。エクササイズを通して気付いたり、感じたりしたことを本音で語り合う。授業では、フイードバックの話し合いの場で、まとめの部分と考えられる。さらに、これにウオーミングアップを入れて考えると、授業に生かすカウンセリングの完成である。また三本柱は、対話の授業の5項目に当たる。
■対話のある授業例

私自身が「童話の展開—日本昔話の鑑賞」として実践した、対話のある授業例を挙げる。

(1)教材=「桃太郎」。
(2)ねらい=誰もが知っている物語によって、参加者が、グループを中心に話し合い、理解を深める。
(3)注意点=生徒指導の機能やカウンセリングの機能を配慮する。対話の中で、それぞれの興味関心を引き出し、討議を深めていく。
(4)シェアリングを重視=特定の人の発言で進めない。一人ひとりの学習意欲や発言、発想を大切にし、授業での存在感や達成感を味わう。

この昔話を討議するために、次の問いを設定した。

(1)旗は何のためか。
(2)きびだんごをなぜあげるのか。
(3)猿をなぜ連れていったのか。
(4)犬をなぜ連れていったのか。
(5)キジをなぜ連れていったのか。
(6)なぜ鬼を退治するのか。
(7)桃太郎の功罪は何か。
(8)この昔話から言えるのは何か。

皆が知っている物語なだけに、話し合いが活発に行われる。同時に、皆が同様に知っているはずの物語について、多様な意見や意外な意見などが出て、学習者同士の新たな発見と出会いが起こる。
ここに、授業に生かすカウンセリングのダイナミズムがある。

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