【連載】新・探偵がみた学校といじめ 実態を把握するために 第2回

NPO法人ユース・ガーディアン代表理事 阿部泰尚

 

いけないことだと指導するために

学校は警察ではないのだから、基本的には犯人探しをする必要もなければ、それを行うに好ましいところでもない。私はそう考えている。

しかし、現実的にいじめの実態を把握するためには、いわゆる「調査活動」を行わなければならない事態も発生し得る。(これは子供たちの命を守ることに直結する)

だが、これまで学校で行われてきたアンケートが、きちんと設計されたものであったのかはなはだ疑問である。

ある小学校で発生したいじめにおいて、すぐにアンケートによる調査が行われた。理由は、加害行為をした者が名乗り出なかったからである。ところが、このアンケートでは、「いじめはない」「見たことも聞いたこともない」との回答しか得られなかった。結果的に、自作自演も可能性の中に含められてしまい、被害児童や保護者との信頼関係が大きく損なわれてしまったのである。

このアンケートの問題点は第一に、学校でいじめの定義が明確になっていなかったところである。原因として、予防教育やいじめに関するディスカッションの不足が挙げられる。次に、すぐに教員が情報を封鎖したことである。情報を無為に広げないようにするという趣旨はよいのだが、それが行きすぎたため、どのようないじめが起きたのか、子供たちが全く知らなかったのである。また、アンケートをいったん持ち帰らせ、随時回収にしたために、回収率が著しく悪かったのも一因といえる。

この件で依頼を受けた際、この子の保護者が他の保護者とよい関係にあったので、そちらに協力を求めることにした。そして、特に時間の特定しやすい物壊しについての話を聞くことにした。私は、折られたペンの写真やペンの一部を、証拠保管用の透明なビニール袋に入れて、被害者本人がいかに辛いかという話をして、協力を求めた。

主な質問は、この時間帯のアリバイだが、動線やこの時間帯に被害児童の机に近付いた者を見たかという具体的な質問をした。そこでわかったのは、男子児童3人のグループが、以前から被害児童にちょっかいを出しており、ちょうど被害発生前の休み時間にトイレで騒いでいたということであった。

教室にいた女子グループによれば、この男子グループが、被害児童の机を囲むようにして、何かを机の下に入れているところを目撃したというのも分かった。午後の授業が始まり、筆入れから鉛筆を出した被害児童が、1回周りを見て、半べそをかいていたのは、ほぼ全員が知っていたが、ペンが全て折られていたのは、誰も知らなかったのである。

私は学校への意見書に、加害の可能性がある児童から話を聞く場合のポイントを記した。しかし、それをするまでもなく、加害児童は保護者を伴い、自らの行為を話し謝罪をすることで、この事案は終結となったのである。

いじめの加害者を知るための調査は、断罪するのが目的ではない。いじめはいけないことなのだと指導するために、必要な情報を得るための調査であり、それがうまくいかないのは、学校にいじめの予防についての基本的な土壌がないからとしかいわざるを得ない。

予防教育は、いじめ発生時の早期収束にもつながる重要な取り組みである。

◇  ◇  ◇

著者の本業は探偵。保護者の依頼で、プロである探偵業のノウハウを活用し、いじめの実態を客観的に調査し、レポートを作成するなどして数多くのいじめ問題の解決に寄与している。いじめ相談は、NPO法人ユース・ガーディアンを立ち上げ、社会貢献活動として当たっている。同法人サイト=http://ijime-sos.com/

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