【連載】学び合いで実現するアクティブ・ラーニング 第9回 今後はバランス学力から脱却

上越教育大学教職大学院教授 西川純

 

入試改革の方向性を示した「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」という中教審答申では、さまざまな提案をしています。ところが、制度を変えたくない人や組織はあります。そこから「そんなの不可能だ」と連呼し、なんとか現制度の延命を願っています。

それに嫌気を指した東京大学は、アイビーリーグでの入試制度のようにエビデンスで評価する推薦入試を導入しました。日本での反応は、「馬鹿げている」「続くわけない」「あだ花だ」という反応が多いと思います。しかし、アイビーリーグの入試制度を知っている人間にとって、東京大学がアイビーリーグ化しようとしているならば、ごく当然の制度であることが分かります。

京都大学の特色入試も同じです。「こんな問題を解ける子供がいるのか」と言われています。これも、既存の考え方から改革を理解しているために生じる誤解です。普通の秀才と優れた秀才を判別するのは難しいです。ところが、秀才と天才を見分けるのはたやすいです。京都大学は天才を求めていると考えれば、ごく当然の新テストなのです。

なぜ2つの新制度は多くの学校教育関係者に人気がないのでしょうか。理由は、今までの方法では太刀打ちできないからです。

自分が高校、大学で学んだことを子供に教え、子供はそれをこつこつ学び、積み上げていけば、入試の結果につながりました。しかし、それでは上記のテストには太刀打ちできません。

東京大学の推薦入試に合格するためには、アメリカの進学校のノウハウが必要です。日本でもそのノウハウを持っている学校はたやすく見いだすことができます。アメリカの一流校に進学実績を持つ学校です。しかし、残念ながらSGHの中でもごくわずかです。

京都大学の特色入試に対応するには、数学オリンピックの対策を学校でしなければならないのです。そして、入試自体もバランス学力から脱却しなければならないでしょう。

なぜ、東京大学と京都大学は必死になっているのでしょうか。

理由は、今までだったら鼻も引っかけなかった企業から学生が振り落とされる現実に直面しているからです。2つの大学は、今までは国内では無敵でした。しかし、つい最近、入国管理法が変わり、海外の人が働きやすくなりました。そのため海外、特にアジアのトップ大学の卒業生と闘わなければなりません。だから変わろうとしているのです。そして、東京大学と京都大学の入試制度が変われば、波及効果はセンター入試より大きいのです。

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