【連載】どうする 学校のプログラミング教育 7 大きく動いた今年を振り返る

(一社)みんなのコード代表理事 利根川裕太

 

今年を振り返ってみると、プログラミング教育の取り組みが大きく前進した年であった。社会の出来事としても、グーグルの人工知能「アルファ碁(AlphaGo)」がプロの棋士に勝ったり、東大がIBMの人工知能型システム「Watson(ワトソン)」を用いて白血病患者の遺伝子解析に成功したりするなど、テクノロジーの進化を伝えるニュースが増えた。人工知能が人間の知能を超えるのはまだ当分先だと言われていたが、予想以上に私たちの生活の中に早く普及するかもしれない。

そんな中、今年4月の産業競争力会議において、平成32年度を目標に初等教育段階でプログラミング教育を必修化する方針が示された。これを機に、テレビや新聞、ネット、書籍などさまざまな媒体でプログラミング教育の話題が取り上げられるようになり、同分野への関心が高まってきた。必修化の流れは教育業界に影響を与え、プログラミングの講座を設ける学習塾が増え、子供たちが楽しく学べるプログラミング教材も次から次へと登場した。

またNHKのEテレで子供向けのプログラミング番組「Why?!プログラミング」が放送されたり、文科省や総務省が全国レベルでプログラミングの実証研究を行うなど、必修化に向けていよいよ本格的に動き出したのを感じた今年であった。

みんなのコードの活動においても、今年は大きな変化を感じた1年だった。必修化の方針が発表されたのを機に、プログラミングに興味を持つ先生が多くなり、教育委員会から引き合いが増えた。昨年の今頃は、プログラミング教育の話題を口にしても「海外の話題でしょ」と敬遠される場面が正直あったが、今は違う。教員向けの指導者研修についても、今年の年初では一部の先生が有志で参加していたのに対し、今では私たちが学校や自治体に赴いて、通常の研修会の範囲で実施する機会が増えた。今年1年でずいぶん幅広い先生に周知されてきたのを実感している。

とはいえ、プログラミング教育はまだまだ黎明期。筆者の感覚としては、全国で小学校の教員数が40万人といわれる中で実際にプログラミング教育に興味を持って動いている先生はまだ1%くらいではないかと思っている。自治体や地域、学校でプログラミング教育を広げていくために、現場でリーダーシップを取れる先生の存在がかなり重要性を増してきたと感じている。

一方で、先行してプログラミング教育を始めている学校では、いくつかの課題も見えてきた。例えば、子供たちにとっても、先生にとっても、いきなり算数や国語の時間でプログラミングを扱うのはハードルが高いとの指摘がある。子供たちはコンピュータの操作方法、入力スキルに慣れない中で、教科の学習とプログラミングの初歩を同時に学ぶのは、指導者もプログラミング経験が浅いのもあり、やはり難しい。最初は総合的な学習の時間などを利用して、コンピュータ・プログラミングに触る機会を持つことが、先生にとっても子供たちにとっても重要だろう。

多くの子供たちがプログラミングを楽しく体験できるようになるためには、まずは現場の先生のプログラミングに対する興味が出発点になる。来年度も、先生たちにより興味を持ってもらえるよう、みんなのコードは全力で支援していきたいと考えている。

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