【連載】ダウンしないため / してしまったら 9 どっぷり浸かっているときに

公立学校共済組合近畿中央病院メンタルヘルスケア・センター
副センター長 井上麻紀

 

仕事、趣味、恋愛、子育て、介護でも、どっぷり浸かっているときには、それ以外が見えにくくなります。見合った成果や賞賛、感謝が得られる場合はいいのですが、やって当たり前、やってもやっても追い付かないのが続くと、人は疲弊します。

疲弊してもなお、「やらねば」「自分が逃げるわけにはいかない」という責任感はありますから、人は努力を続ける場合が多いものです。ただ、このときに、誰かに話ができるかどうかが、メンタルヘルス維持のためには分かれ道になります。そして、周囲に、黙ってただ聞いてくれる人がいるかどうかもポイントになります。

完全に疲れきってしまう前に、身近な誰かに、最近あった出来事や気持ちを話してみましょう。話すときには、「私、疲れているから、今は黙って聞いてね」と聞き方のリクエストをするのを知っておいてください。話をしたのに、できそうもないアドバイスばかりされて、かえって疲れてしまう。そんなことは多いものです。

聞く側になったときには、「どうしたらいいと思う?」と言われると、親切でつい2つ3つ意見を言ってしまいがちなのですが、相手がかなり疲れていると感じたときこそ、「大変だね」「うんうん」と聞いてあげてください。「こうしたら?」「ああしたら?」は、「そんな気になれない」「でも」と、すぐ否定されて、聞く側には徒労感が残り、話す側は悲しい気持ちになります。

話は、1時間を目安に聞き終えていいと思います。教員は、世話好きな方が多いですから、ついつい5時間聞いたという人もおられます。長時間は必要ありません。

そして、「あなたはどうしたいの?」と聞いて、相手にしゃべらせてあげた方が、役に立ちます。仕事や介護の大変さを語りながら、実はこうしたいとも思っているなどの考えは、黙って聞いてくれる人がいたら、本人から出てくる場合があります。何より、受け止めてもらえた安心感が得られます。

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