【連載】学校教育相談の歩みと展開 第18回 日頃の教科指導などと親和的

函館大谷短期大学名誉教授 保坂武道

 

■サイコエジュケーション

教育カウンセリングの方法の中で、私が最も魅力的だと考えているのは「サイコエジュケーション」である。理由は、現代のような社会には特に必要だと思うからである。

ところが、この内容はあまりにも広範囲で、理論的、手法的にも理解する上で困難なものがあるのも事実だ。また日本教育カウンセリング学会の中でも、養成講座において、これを分かりやすく論じ、実際に展開できる人もそう見当たらない。

理屈はともかく、要するに、優れた音楽、絵画、文学、彫刻、演劇、映画、能、ドラマなどを児童生徒とともに鑑賞し、感動を深め、豊かな情緒や感性を培うのを最終目標としているのだととらえておくとよいだろう。教育現場の形式的でマンネリに陥りやすい道徳の授業から脱皮するためにも、有意義な手法である。

その点、北海商科大学の大友秀人教授のサイコエジュケーションに対する、姿勢、熱意、これを用いたキャリア教育の実践は、見事である。

それでは、なぜ、サイコエジュケーションなのか。文科省が提唱する「心の教育」を翻訳すると「サイコエジュケーション」となる。これは、カウンセリングや心理療法の世界の、開発的なアプローチのひとつの潮流・形態である。また予防に対して心理学的な考え方や行動の仕方を能動的に教える方法である。伝統的なカウンセリングの方法が、一対一の面接法など個人を対象とし、傾聴を主として洞察し、対応していくのとは対照的である。

したがって、サイコエジュケーションは、日頃から集団を対象として指導的な行動をとっている教師にとっては、なじみやすい手法と思われる。これからのカウンセリング界では重視されてよいと考える。

サイコエジュケーションはまず、問題発生予防のためにある。特に、対人関係の希薄化に起因しているものに対して、抜本的な解決につながる。

またこれは、いわゆる健常者の集団を対象としている。学校カウンセリングでの主たる対象も、健常な生徒の集団である。

さらに、可能性を開発する点が特長である。新しい行動の仕方、考え方、感じ方を学習することにある。

そして、教師の通常の守備範囲である点だ。教科指導とともに意図的に取り組むべき専門領域でもある。

■キャリア教育

社会は急激に変化している。国際化、情報化はもとより、科学技術の進歩、環境問題などを含めて、これらは、学校教育における進路指導・キャリア教育にも大きな影響を与えている。さらに、ニートやフリーターの大量出現は、学校教育におけるキャリア教育の意義や目的、基本的な取り組みについて、喫緊の取り組みを迫っている。

とりわけ、社会格差、学校間格差が顕著で、若者に妙な優越感と劣等感を与えている。そこからはみ出た居場所のない、自己効力感の極めて低い集団が、深刻な社会問題を引き起こす場合がある。社会生活、経済、教育などに不公平や不平等が拡大している今、日本の教育はどこへ向かおうとしているのか。教育の抜本的な改革が望まれる。

どんな子にも人間としての自尊感情を育み、学校教育で存在感や有用感、達成感を与え、良好な人間関係を築かせたい。それぞれの目標に向かう創造的で意欲的な若者を育てたいものだ。それは、ランク付けの教育からは生まれてこない。

学校教育でそのベースになるものは生徒指導であり、教育相談であり、キャリア教育であるといえよう。

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