【連載】新・探偵がみた学校といじめ 実態を把握するために 第5回 情報に段階を付け調査報告慎重に

NPO法人ユース・ガーディアン代表理事 阿部泰尚

 

いま起きていることや直前の出来事については容易に正確に答えられる。だが、1年前のこの時間、何をしていたか、何を見たか、記憶があやふやになる。あまり過去のことを調べるのは探偵にとっても難易度が高い。調査のタイミングと密接に関係するが、本格的な調査をするには、ポイントを定めるためにも事前の情報が不可欠。人の記憶とは、他の影響を受けやすく、物事の解釈は特にそうだ。

いじめが起きてから時が経過し過ぎてしまえば、正確な情報を得るのは難しくなる。一方、事前の情報に誤りがあれば、調査結果を誤るか、前進しないことになる。

鮮度も重要だが、事前の情報の正確性は不可欠だ。そのためには、日常から児童生徒をよく観察し、いじめが報告されたときに迅速に対応できるように仕組みを確立し、時折シミュレーションする必要があろう。

では、こうした報告を発表するタイミングはどうか。探偵調査でいえば、調査報告をいつするかだが、中途報告やクライアントとの打ち合わせにおいては、確定しない情報を確認のために口にすることはあっても、書面や確定情報としては絶対に報告はしない。ひとたび確定としてしまえば、後に引くことが極めて難しくなるからだ。

いじめが起きて、被害保護者に報告したり、重大事案であれば記者発表したりすることもあろう。ここでの発言は打ち合わせのレベルではなく、確定情報であると考えるのが当然だ。探偵であれば、調査報告書をクライアントに説明する状況に似ている。

ある中学校では、特定生徒の持ち物が連続して壊される事案が発生。誰がやったか分からず、目撃者もなかったため調査は難航。学校と被害生徒の保護者との関係は日に日に悪化していった。生徒間でも犯人探しが始まり、被害生徒とあまり仲が良くなかった男子生徒が疑われた。この生徒に教員が確認したところ曖昧にやったかもしれないというような発言をした。この状態なら裏付けを取り、慎重に調査を進めるところだが、連日の対応と調査に疲れていた教員の1人が、十分な裏付けもなく保護者に報告してしまった。

確かにこの生徒は連続した被害のうち、1つのいじめに深く関わっていたが、よく調べてみると、他の生徒が集団で行っていたのが判明した。当初、男子生徒は自分が単独犯とされると、自分がやったのではないと証言を覆した。だが一度、報告してしまったので、学校は保護者から執拗な聞き取りを要求され、学校の後手対応への不満も噴出。この影響もあり、調査はさらに進まなくなった。

その結果、最初の報告をいったん訂正し、再調査仕切り直しの事態となった。後の調査報告をする際には、私が保護者の要請に応じ、調査報告をセカンドオピニオンの立場で評価することになった。

これが探偵調査であれば、消費者被害として訴えられるかもしれない。報告は裏付けのある「確定情報」、裏付けの必要な「要確認情報」、得たばかりの「一次情報」、伝聞の領域を出ない「伝聞情報」などと区別する必要がある。報告すべき情報といったん保留する情報を分け、いくつかの中途報告をするべきだ。

いじめに真剣に向き合う教員はぜひ情報の取り扱いに細心の注意をしてもらいたい。

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