【連載】学校教育相談の歩みと展開 第20回 教師と生徒が本音で人生語る

函館大谷短期大学名誉教授 保坂武道

 

■定時制高校でキャリア教育

北海道の定時制高校のA教師は、道南のいわゆる底辺校で4年生を担当し、日々キャリア教育に頭を痛めていた。30歳を超す職業人から18歳の若者まで、人数は少ないものの、生徒が実に多様なのが理由だ。目的意識をもって入学した成人がいる一方で、非行歴を重ね、学力が低く、ようやく入学してきた一筋縄ではいかない強者もいる。

そんな中で、NHKの番組「プロフェショナル—仕事の流儀」に出会った。キャリア教育の起爆材、生徒への一種の動機付けとなる。これだと思った。録画し、週一のペースで観せた。見せるだけでなく、感想や意見を交換し、討議する授業にしたら、食いついてきた。生徒から喜ばれ、感謝もされたという。「時代を反映し、リアルで迫力がある。問題点が明確で、つくりものでない。伝えるインパクトがある」。プロの生き様に学ぶものが大きく、自分自身が感動の連続だったと語っていた。

生徒の感想は——。

A女=職人ってやはりいいなあと思った。きっと、ずっと「自分の中に納得がいかない」人じゃないといけないんだろうなと思う。それが、いいか悪いか本人にしか分からないだろうけど、絶対に後悔はしていないと思った。

B男=やっぱり、自分でやりたい仕事をやるのが一番大切。

C男=努力の積み重ねが大事と改めて知った。

D女=一生懸命な人にはきちんとした目標がある。

E男=いろんな失敗があるけど、その中から大切なものを見つけ出した人たち。えらいなあ。

未来は決して明るくはない。生徒一人ひとりがそれなりに「自分の人生や職業」を真摯に考え始めたのは、教師としてうれしい限りだと、A教師は語っていた。

教師と生徒が本音で人生を語り、職業を考える人間教育である。教育関係者に、キャリア教育についてもっと教育的な配慮をしたらどうかと、私は言いたい。

■学校教育相談のまとめ

1970年代初めの青少年非行、半ばからの校内暴力や対教師暴力。80年代のいじめ。90年代にかけての登校拒否や高校中退などの問題がマスコミを賑わせてきた。校内暴力やいじめ、不登校等の問題行動は、今も後を絶たない。生活の乱れ、主体性や協調性や忍耐力の欠如、不良行為、非行少年といった生徒指導上の課題は尽きない。

多少の変動はあっても、ときに凶悪化し、学校だけでは対処できず、関係機関との連携は避けられない状況もある。学校現場で殺人事件まで起きている。

このような深刻な問題も含め、子供の問題行動は陰湿化し、過激化している。人を殺してみたかったと実行し、遺体を撮影しておくなどという冷酷な事件も起きている。授業崩壊・学級崩壊、子供の社会性の欠如などが全国に広がっている。

子供の一つの問題行動は、授業のあり方や学校・学級づくりと深く結びつき、家庭や地域とも深く関わっている。子供の成長と環境の問題を生徒指導・教育相談の視点から幅広く、総合的にとらえ直すことが望まれる。「消極的な生徒指導」と、人格の形成という「積極的な生徒指導」「開発的な学校教育相談」のどちらも充実させることが大切だ。能動的な教育カウンセリングも積極的に取り入れ、実践しよう。

こういう時代だからこそ、学校教育における生徒指導、教育相談上の課題((1)自己決定力の欠如(2)規範意識の低下(3)生活習慣の乱れ(4)自尊感情の欠落(5)良好な人間関係を築けない)を、しっかりと押さえたい。

リーダーシップ論に、「思想・哲学なきリーダーは短命」との格言がある。確かな実践の背景には、優れた理論がある。それは一体のものだ。ある中学校の校長室には自戒を込めて「優れた教師が子供を伸ばす」と大きく掲示されていた。肝に銘じたい。

幸いなことに、学校教育相談の歩みと活動を振り返ると、「開発的な教育相談の重視」「能動的な技法の開発」「スクールカウンセラーの導入」「関係機関との連携促進」など、以前には考えられなかった動きが急速に見られる。教育現場で地道に取り組んできた先生方、各教育研究所での取り組み、行政、民間機関の方々の努力によって、今日では、学校教育相談は不動のもになってきたのは心強い。

今後とも、各学校における校内研修や各研究大会、学会で、より広く、深く、生徒指導・教育相談が進展するのを願わずにおられない。

(おわり)

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