【連載】「深い対話」のある授業づくり 第1回 教科のねらいを常に明確に

割り箸を燃やす実験に夢中。そこから対話が深まっていく
割り箸を燃やす実験に夢中。そこから対話が深まっていく
東京都文京区立千駄木小学校主幹教諭 原梨絵

 

授業に対話を取り入れる。それによって児童が主体的に学び、学習の理解が深まる。これは今や、どの教師も意識していることであろう。しかし難しいのは、対話の質である。一見活発に話しているように見えても、いつも同じ子供が話していたり、何を話したらよいか分からず黙っていたりするなど、時間ばかりかかってしまい、授業のねらいを達成できないという事態はないだろうか。

「深い対話」で大切なのは、まずその授業において、ねらいを明確にしておくことである。特に話し合い活動が多くなる対話型授業では、今、何をしているのか、今日、何を学んだのかが分からなくなってしまう子供も出てくるだろう。よって板書やワークシート等でめあてをいつでも確認できるようにしておき、今日のねらいを教師も子供も確実に把握しておく必要がある。

教師が知識を一方的に伝授する従来の授業とは違って、対話型授業では子供が多様な考えを出し合い、よりよい考えを創り出そうとする。教師が予想している解答を飛び越えた意見や、また一見とんちんかんな意見に見えても、実はその教材の本質に迫る内容もある。子供の鋭い考えに気づき、教師がタイミングよく取り上げることが「深い対話」に近づく第一歩である。

6年生理科に「ものの燃え方」という単元がある。教科書では、順番に実験する流れになっているが、教師はあえて第1時に、マッチと割り箸を児童に渡し、「割り箸1膳をマッチ1本で燃やすにはどうしたらよいか」と問いかける。燃焼には酸素が必要であることや、炎の内炎や外炎の温度まで知っている子供もいるが、実際に燃やしてみると、ほとんどの児童がうまくいかない。

「あれ?」「どうやったら燃えるの?」。子供たちは話さずにはいられない。木の組み方、炎の付け方、マッチの擦り方、さまざまな課題が出され、予想を基に実験計画を立てる。次こそ全部燃やしてやろうという意欲をもって、ものが燃える仕組みを学習する。

このように、教材の扱い方次第で対話がぐんと深まることがある。そのためには、教科のねらいがぶれないよう、教師が綿密に教材研究を行うことが必要である。教師が一方的に教えるのではなく、子供が対話しながら実感し、知識や技能を身に付けていく。その考える過程こそが「深い対話」であると捉えている。

(「深い対話」の概念については、『授業で育てる対話力』多田孝志著、教育出版を参照)