【連載】キャリア教育を深める 第1回 未来はすでに始まっている

静岡県立韮山高校教諭 鈴木映司

「『合格』ではなく、その先で『何をするか』を目標に」。12年前に現在の勤務校に赴任したときから掲げている方針だ。社会の変化や生徒の発達段階を無視して、有名大学に何人送り込んだかという手柄のために行われる進路指導はおかしい。そう思いつづけて、ガイダンスとカウンセリングを続けてきた。昨年、文部科学大臣表彰を拝受した。

学校と社会を近づける工夫を通して学校の外とつながればつながるほど、「疑問」を感じたのが「授業」であった。

本校のインターンシップの体験先は多岐にわたる。その体験先である企業や研究機関、医療現場からいただくフィードバックには、学校に対する要望もつづられてくる。

「1日体験しても、質問が1つもでない」「受け身でなく積極的に体験する指導をしてほしい」「教育のレベル改善を望みたい」「10年後、20年後にアジアや欧米のライバルと競うことができるのか」。真剣に「授業」を何とかしなければと考え始めた。

前任校では、当時開設が始まった総合学科高校への学科改編に携わった。そこでの授業はまさに仕事と学校、地域と教室、自分と学びを密接に結びつけるものだった。「キャリア教育から授業改善」の流れは、自分にとっては自然だった。

現在は、進学校の普通高校でキャリア教育に携わっている。ここ数年の世の中の変化には驚く。進路の話をするとき、私たちは子供たちが活躍するであろう10年先、20年先をしっかり見据えて話しているだろうか。

ガイダンスの際に2035年までの「近未来年表」を配っている。これはシンクタンクや政府、さらに都道府県の統計が示すデータを年表にしたもので、未来を具体的にイメージできる。日本の人口は現在より1200万人ほど減少し、一極集中の東京でも老人の単身世帯が急増する。AIにより、仕事の半分は自動化される。過去を知れば、未来に対するイメージも作られる。逆に20年を遡ってみると、1997年は香港返還・北海道拓殖銀行破綻・山一証券自主廃業があった。あれからどのような出来事があっただろうか。われわれはどのような指導をしてきただろうか。

未来の予測と過去のふり返りから多くのヒントが得られる。教育という未来を作る仕事に携わる私たちは、今このことにもっと関心を払うべきだろう。

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鈴木映司(すずき・えいじ)=静岡県立韮山高校地歴・公民教諭、ガイダンス・キャリアカウンセラー、日本学術会議小委員会委員