部活動の在り方を問い直す(1)劣悪な労働環境が子供への被害に

eye-catch_1024-768_bukatsu_r部活問題対策プロジェクト

教員の劣悪な労働環境が、教育を荒廃させる。その被害は子供たちに及ぶ。現在、その最後の耐火壁が崩壊しつつある。

想像してほしい。あなたが深夜、交通事故に遭ったとしよう。救急車で運ばれた病院では、過労死ラインを超えて勤務する研修医が、命懸けで治療に当たる。連日にわたる疲労から、研修医は万全を尽くせない。膨大な業務量を抱えてパンク状態の研修医は、治療に必要なノウハウを習得できていない。その研修医が、あなたの治療に当たる。

ここに登場する「あなた」は「子供」であり、「研修医」は「教員」である。このたとえが現在の子供と教員が置かれた状況を端的に表している。

教員の異常な勤務実態が注目を浴びるようになって久しい。「長時間労働」「過労死ライン超え」などの言葉を連想する人も少なくないだろう。

本務だけでも過労死ラインを超える。私が小学校教員の頃、1カ月の超過勤務は常に100時間を超えていた。過労死ラインを下回ったのは8月のみ。年間平均は月130時間。多い月は180時間で、このうち部活動が80時間、本務が100時間であった。

部活動については、とりわけ闇が深い。本稿では3点の闇について言及する。

第一に、部活動の位置付けは曖昧であり、それ故に十分に必要な人材が確保されない。

第二に、現在の部活動では、顧問に専門的な技術指導が要求される。本来の「顧問」という組織運営の相談役ではなく「指導者」が求められている。

第三に、「指導者」の役割を求められるものの、教員は指導方法を知らないまま指導に従事せねばならない。教員も苦しいが、素人指導者の下で安全を保障されず、子供が被害に遭う事態こそ見過ごしてはならない。これらは全て、部活動の在り方として学習指導要領から大きく逸脱している。「子供の自主的・自発的な活動」という学習指導要領の在り方に原点回帰する必要がある。

残念ながら、子供を部活動に強制入部させている学校がある。部活動で深刻な被害を受ける子供がいる。即刻、改める必要がある。学校は子供のための場であり、そこで子供が被害に遭うことは絶対にあってはならない。

子供と教員は生活を共にする運命共同体でもある。劣悪な労働環境に置かれた教員は、教壇に立つにふさわしくない。しかし、「研修医」は今日も明日も、劣悪な労働環境の中で「あなた」の治療を続ける。(小阪成洋)

※本連載は部活動の顧問経験者らによる「部活問題対策プロジェクト」メンバーが、1人1回ずつ担当して寄稿する。