役割演技で深める道徳 ~実感的理解の創造~(2)役割演技の要件を見る

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上越教育大学教授 早川裕隆

役割演技を実施する際の要件をみていく。

まず、役割演技による授業者(以下、監督)である。監督は子供たちを知る学級担任が行うことが望ましい。

監督には「授業者役割」以外に、演者を選ぶ、場面を設定するなどの「演出者役割」、演じられた意味を解釈したり、子供たちに解釈を促す質問をしたりする「分析者役割」、役割演技を通じて明らかになったことを、子供たちに適切にフィードバックし、理解を深めさせる「発達援助者役割」がある。

児童が演じづらい役割は、他の教師に依頼する
児童が演じづらい役割は、他の教師に依頼する

なお、例えばグループごとに、同時にそれぞれの場で役割演技を実施するのは、監督が不在になるので望ましくない。同様に、子供が演じづらい役割は、授業者が演じるのではなく、校内の教員や保護者などに依頼するのがよい。その他にも、子供たちが安心して役割演技を遂行できるよう、監督は以下の2点に留意するのが肝要である。

▽演者や観客が役の表現の巧拙にこだわらないようにする。

▽観客が演技の批判をしないようにする。

次に演者である。演者は演じるだけでなく、演じた後に持たれる話し合いで、演じた役割の意味や意義を観客と共に分析しながら、道徳的価値の理解を深め、さらに新たな役割を創造しようとする主体的な学習者である。

また、主役の役割の遂行を支援し、演じられた役割の意味を明確にする適切な相手役割を「補助自我」と呼ぶことがある。なおこのときに「お面」を用いる必要はない。

演者より大切なのが、支持的な観客である。観客は、演者の共鳴板となり、演じられた意味や意義を共感的に理解し、明確にする。良い観客は、演者の姿見のような役割を果たしながら、共にテーマを探究するため、監督の「分析者役割」も補完する。

なお、観客は演者を同一視しながら客観的な分析を行っているため、いつでも演者と交代ができる。したがって、観客の学習内容が演者より劣るということはない。

子供たちが恥ずかしがって演者をしたがらない、逆に、喜んで演じているけれど、何が分かったのかが分からないといった問題は、安心して演じて学ぶ学習の場を創造する演者が育っていないことに起因する。

次号は、学級経営にも直結する、良い観客を育てるウォーミング・アップの「実際」を紹介する。

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