役割演技で深める道徳 ~実感的理解の創造~(3)ウォーミングアップと演者の創り方

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上越教育大学教授 早川裕隆

前号の最後に、ウォーミングアップ(以下、W―up)が不十分な役割演技の弊害について述べた。本号では「早川流」のW―upの仕方について述べる。

まず、観客を育てるW―upである。いきなり演じるように監督から指示されれば、小学校中学年以上ならば、大人を含め、少なからず周囲からの評価に不安を抱き躊躇するであろう。そこで第一に、役割演技は演劇とは違うことを、実感的に理解してもらうのが肝要である。

良い観客を創ることが、大切な第一歩
良い観客を創ることが、大切な第一歩

まず「視る」「聴く」「考える」と板書し、「聞く」「見る」との違いを想像させる。文字の形などから、子供たちは心のありよう、すなわち「傾聴」や「凝視」の重要性に気付く。役割演技の観客のベースになる。

次にポーズ遊びをする。前に出てもらった児童に、「ストップ」と言われたときの姿勢で止まるように依頼し、体操をしてもらう。例えば、両腕を開いたところで止め、何に見えるかを観客に問う。

最初は「手を広げた女の人」程度の反応だったのが「何歳くらい?」「何をしようとしているの?」「どんな気持ちに見える?」と問い続けると「息子がいつも食事を残すので、今日は残さないよう、おいしい料理を作ろうとワクワクしながら、両手いっぱいに食材を抱えたお母さん」などと想像できるようになる。

「本当にそう視える(聴こえる)ならば×はない。全て○」と強調すると、観客は演者の演技を否定せずに、共感的に理解しようとする、温かな解釈者、支援者になる。すると、自ずと、役割演技は演劇とは違い、演技の技巧にこだわる必要がないことに気付き、安心して演じようとする自発性が高まってくる。

これを多様な場面で続ける。例えば、あいさつの指導を行う朝の会で、動物になって出会いの場面を演じたり、毎日の健康観察で、ある日は太陽、ある日は雲のように、日ごとに違う役割になって返事をしたりする。否定されず、支持的、共感的な雰囲気から、自発的、創造的な演者は生まれる。

次に、その時間の演者を創ること。例えば、「泣いた赤鬼」の主役は「赤鬼」であるため、発問も赤鬼を問うことになる。だが、例えば「青鬼の貼り紙を見た『赤鬼』は、どんな気持ちになったでしょう」と問うと、「『青鬼』は、最初から赤鬼のために悪者になる決心をしてたんだ。こんなにも赤鬼を思って…」のように、青鬼を語る児童が必ずいる。

赤鬼が主役として演じられる大切な相手役の「青鬼」になれる児童が見つけられた瞬間である。

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