役割演技で深める道徳 ~実感的理解の創造~(4)演じた後、誰に何を聴くのか

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上越教育大学教授 早川裕隆

「二わの 小とり」(みそさざいが1羽だけ、うぐいすの家から抜け出してやまがらの家に行く場面は省略)を教材にした小学1年生の授業。

うぐいすの家で歌の練習をしているときのみそさざいの気持ちを想像するようにすると、A子は、「みんな遅いなあって、やまがら君は悲しくなってるんじゃないかな」と発言。この時間のやまがらを演じられる大切な児童を発見できた。さらに「どうしようかなって。困ってる」と発言したB男をみそさざいに指名して、うぐいすの家の小鳥たちを演じた。

「何て言っていた?」「どんな表情に見えた?」
「何て言っていた?」「どんな表情に見えた?」

演じ終わった後、まず観客に「みそさざい君はどんなことをしていた?」と聴くと、観客は「あのね、みそさざい君は、ずーっと下を向いていたよ。今ごろやまがら君はどうしてるかなって、心配になっちゃったんだよ」と指摘した。

このような、まさにビデオを再生するかのような観客の気付きが、演じた直後は自分の演じた役割を客観的に振り返ることができない演者に、演じた役割の想起や冷静な解釈を促す。ときには、演者が演じながら発した言葉を繰り返してその意味を観客に問うたり、「みそさざい君、歌を歌う間ずっと下を向いていたけれど、何を思っていたように見えた?」と、動作や表情の意味を問うのも良い。監督が象徴的に感じた言動を具体的に示し、観客の解釈の手掛かり(きっかけ)とする。

さて、他の小鳥たちの演じた内容や意味も観客に問いながら明らかにした後、次に演者のB男に「『みそさざい君は、やまがら君のことが心配で、歌うこともできなかったんじゃないか』という意見もあったけど、どう?」と問うた。

B男が「そうなの。ずっとやまがら君がどうしているか心配で…」と言うと、うぐいすが「なんだ。だったらみんなで歌のプレゼントをしに行こう」と提案した。すると、みんなも「そうしよう」と笑顔で応じた。みんなで歌のプレゼントをしに飛んでいくという新たなテーマが生まれた。

この後、歌のプレゼントを届けに行く小鳥たちが演じられた。小鳥たちは、すぐに到着しようとするが、3つ山を越さなければ着かないと指示すると、最後まであきらめずに羽ばたき続け、とうとう不安顔で待つA子の下にたどり着き、歌をプレゼントした。

この後、すぐにA子に聞いた。「あのね、最初はただの友達だったの。でも今は、とーっても大切な友達になったの」。不安顔から、最後は満面の笑顔のやまがらを演じたA子の「実感」である。

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