21世紀の学び 音楽と数学のハーモニー(3)数学と音楽は似ている?

eye-catch_1024-768_nakajima音楽家・数学者・STEAM教育者 中島さち子

学校の数学では大抵、完成された公式や定理などを知識として学びますが、公式や定理の背後には多くの数学者の極めて人間的なドラマがあります。数学とは新しいものの見方を発見・創造する世界であり、その創造過程は芸術に近いものです。学校で数学を学ぶ意義は、公式の習得以上に、発見・創造の苦闘や喜びを一人一人が自分なりに追体験し、論理と感性を研磨することにこそあると私は考えています。

音楽も同様で、過去の偉人が作った名曲を譜面通りに演奏できるようになるだけでなく、間違っても未熟でもよいので、時には作曲や即興・主体的な鑑賞や表現に挑戦し、過去の音楽家の創造過程を疑似体験することで、論理や感性が深く磨かれると考えます。

21世紀の学び~音楽と数学のハーモニー~3数学と音楽は「創造」の点で似ていると、私自身が日々悪戦苦闘しながら感じています。数学や音楽を学校で学ぶことは創造やイノベーションの原体験となります。なお、数学や音楽における創造は「発明」というよりは自然が与え給うた美しい神秘の姿を「発見」する行為に近く、美を感知する力も重要になります。ピアニストのHorace Silverは「神の音楽が私の手を伝って降りてくる」と表現しました。数学者の岡潔は「数学の独創には道端に咲く一輪のすみれに気付くような情緒が大切だ」と説きました。

こうした感性力は、21世紀のAI時代、特に改めて重要になると考えます。

具体的にも、数学と音楽に似た点は多くあります。例えば音は空気の振動による波であり、波はさまざまな三角関数を調理したものです。楽器の音には基本振動数が定まり、基本振動数が2倍になると音は1オクターブ上がり、3倍になればドは1オクターブ上のソになります。ドミソの振動数比は約4:5:6と綺麗な整数比なので、耳に心地よく届くのです。ピアノの弦は指数曲線を描き、ピアノの鍵盤はそれを対数的に表現したものです。

バッハの音楽には対称性が多数現れます。バッハ作品やジャズには、群論的に奇麗に解析できる動きもあります。私は近年、対称性をテーマに「数学×バッハ・エッシャー」というワークショップを開催しており、対称性を活用した作曲にも挑戦しています(写真)。対称性に関する理論は数学的にも深く美しく、音楽や芸術との絡みは非常に面白いところです。

学校でもぜひ数学×音楽プログラムを実施したり、時には過去の数学者や音楽家の泥臭い人生を振り返ったり、探究に共に四苦八苦しながら、激動の21世紀を生きる若者の創造力や感性を刺激していただければと願います。

関連記事