みんなで「教える難しさ」に立ち向かう―22年の事実と実例に基づいて― (2)「教えていかなければ…」、その思いがスタート

eye-catch_1024-768_kouno学習教室「エルベテーク」代表 河野 俊一

前回、「教える難しさ」をめぐる3つの困難に触れました。それぞれの困難を乗り越える方法についてこれから述べていきますが、最初に指摘しておきたいのは、教員にも保護者にも「教えていかなければならない」という、強い気持ちがあるかどうかです。その思いがあるなら、3つの困難に対して知恵を絞り、工夫を凝らすことができます。

しかし、その強い意志がなければ……、解決の糸口はいつまでたっても見つからないのではないでしょうか。

きちんと書く姿勢も指導で身に付く
きちんと書く姿勢も指導で身に付く

そういう意味で、現在の教育現場は、「教えていかなければならない」という対応と、「無理をさせてはいけない」「遅れや課題は個性・特性である」という対応がせめぎ合っている、と言えるかもしれません。

私は保護者との面談の際に、学校での様子もよく聞きます。また、先生方が教室の見学に訪れるとき、学校の最近の動きについて話し合います。その中から参考になる2つのエピソードを紹介したいと思います。

ひとつは小学校の全校集会でのエピソードです。通常学級の子供たちの後ろに並んでいた特別支援学級の児童がぴょんぴょん跳ね、声を出していました。自閉傾向のある小学4年生の男子です。その前にいた女子児童が「しーっ。静かにしないといけないよ」と声を掛けました。

すると、横にいた特別支援学級の担任は、「この子はじっとしていることができないの。だから、そんな言い方はしないでね」と返したそうです。特別な子供だから、分かってあげてね、と言いたかったのでしょう。

その後、校内で、「不適切な言動でも、その子の個性として認めてあげる、だから改めるよう促すべきではない」という対処法を共有したいとの意見が出たそうです。

その時、ある教師が「それは違うと思う。支援学級の子でもどうすべきか教えていくべきだ」と発言し、同じ考え方の交流学級の担任と共に「いけないことはいけない」と諭し教えていくようにしたとのこと。

たとえハンディがあろうとも不適切な言動は改めていかなければならない、教えていかなければならない、その練習が学校という場では必要なのだ、そう思っての行動だったようです。

「静かにするよ」と諭す指導、「静かにできないのよ」と見守る接し方。まさに正反対の対応です。現在、その子は交流学級で静かに離席せずに学んでいるそうです。ここに全ての答えがあるように思われます。

特別支援学級の子供全員が、指示をすんなり聞き入れ改められるとは言いません。しかし、教師がタイミングよく適切に対処すれば、かなりの子供は聞き入れられるはず。何をしてはいけないのか、どうすればいいのかを子供なりに理解するはずです。

「どの子にも教えていかなければ」という思いが、教育の始まりではないでしょうか。

2つめのエピソードは、次回にご紹介します。

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