みんなで「教える難しさ」に立ち向かう―22年の事実と実例に基づいて―(3) 適切で効果的な指導法を共有する

eye-catch_1024-768_kouno学習教室「エルベテーク」代表 河野 俊一

前回、特別支援学級の児童を巡る一つ目のエピソードを紹介しました。もう一つは「自閉スペクトラム障害」と診断を受けていた、通常学級に在籍する小学1年生の男子の話です。

入学式当日、騒いで離席したり床に寝転がってしまった彼は、授業が始まっても離席したり教室から出たりと状況は変わりません。担任は彼に対して繰り返し「席を立たない。出て行かない」と教え続けましたが、そのつど付き添っている母親から「そんなことはしないで、分かってあげてください」という言葉が返ってきたそうです。

きちんとノートも取れる
きちんとノートも取れる

担任は困って、校長に相談しました。「教室にいられるようにしてあげたい。きちんと座って授業を受けられるようにしたいのです」。校長は「大変だろうが、応援するから頑張ってほしい」と担任を励ましました。

担任は、「親から離れられないことが一番大きな問題だ」と考え、教室まで付き添っていた母親には次第に廊下から見るように指導していきました。

1学期終わりには授業中座れるようになりました。秋の運動会のダンスの練習を積み重ねるうちに子供自身が手応えを感じたのか、付き添いなしでも授業を受けられるようになったのです。

入学当初から、「子供の気持ちを分かってあげて」「無理をするとかわいそう」と接してきた母親でしたが、子供の顕著な変化を目の当たりにし、考えを改めたそうです。「教えれば変われる」という教育の事実を理解し、親自身が「教えていかなければ」と考えるようになったのでしょう。2学期後半から、母親は担任に対して絶大な信頼を寄せるようになったのです。いま2年生になり一人で登校し授業を受けているそうです。

紹介した2つのエピソードですが、「教えること」の本質を伝えていると思います。

根気よく教えようとすると、それが間違っているかのような指摘や反論がなされます。「子供の気持ちを尊重して」「無理はさせないで」など。子供の不適切な言動を諭し改めさせようとしているだけの、当たり前の指導を、なぜ躊躇しなければならないのでしょうか。

この現状を打ち破るためには、教師の熱意だけでは難しい。「教えること」に理解ある管理職を後ろ盾に、同時に教師間で適切な効果的指導を共有し合うのです。紹介したエピソードのように、身近なところに成果を上げた実例と指導法が多くあるはずです。それをみんなで参考にして、学校全体で教えるためのスクラムを組むことが求められていると思います。

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