多文化共生教育の最前線 [横浜市立飯田北いちょう小学校の実践から](3) 多文化共生の学校づくり

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「入学すると、自分の国のことを忘れるんだろうな……」

入学式に参列するために来校した、ある外国に関係のある児童の祖父母が話しているのを耳にした。

本校では、校舎内に入ると子供たちにつながりがある国々の言葉で「おはようございます」「さようなら」「いっしょに遊ぼう」などの掲示が目に飛び込んでくる。1年生の教室前の廊下の傍には、子供たちに関係のある国々の民族衣装や民芸品、本や雑誌、ボードゲームと、日本の昔の道具類が展示されている。「一人一人の母語・母文化を認め、大切にしている」というメッセージとして展示しており、その祖父母の方々も、それを見て心から安心していた。

各国の民族衣装や民芸品が並ぶコーナー
各国の民族衣装や民芸品が並ぶコーナー

児童が安心して通える学校を、「日本人を含め全ての児童が安心して通える学校」と捉え、お互いの文化や習慣、宗教などを尊重し合える「多文化共生の学校」づくりを推進している。

いちょう小と飯田北小が統合した際、多くの地域の方、保護者、児童、教職員から、大切にしてきたこと、大切にしたいことを挙げてもらい、学校教育目標と校歌を作成した。学校教育目標は「心つながり笑顔ひろがり世界へはばたく」。校歌には「♪世界中の誰とでも心つなぐ笑顔育む」という歌詞が盛り込まれている。全ての教育活動を計画する際には、全教職員で多文化共生という視点を大切にしている。これは私たち大人だけの合言葉ではなく、子供たちにとっても同じである。

今年度4月、児童会のスローガンを「笑顔あふれる I(ハートマーク)Iの絆」とし、友達の国の言葉であいさつをしよう、というめあてを設定した。登校時には、ベトナム語、中国語、クメール語、ラオス語、タガログ語、ポルトガル語、タイ語、英語、そして日本語で「おはようございます」と書かれたボードを日替わりで持ち、あいさつを交わしている。

この活動は、「それまで何不自由なく生活していた環境から離れ、言いたいことが言えない、話している日本語が分からない」という来日したばかりの友達に対して、多数派(マジョリティー)から少数派(マイノリティー)側に働き掛けるということだけではない。

今までは日本での生活を豊かにしてほしいという気持ちで、日本語で語り掛けていたが、「友達の不安に寄り添い、友達が安心できる母国の言葉であいさつをしたい」という発想を児童が持つ。そうなれば、子供たち目線でも、「多文化共生」を大切に考えていると言えるだろう。

(国際教室担当教諭 菊池聡)

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